研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -032/090page
に感じ取るには,“もよう”を一つの言葉をして表現することである。“も→よ→う”とつないで歌い,“もっよっう”とならないように注意する。
(5) 練習法(1) 和声の響きについて
和声の響きの美しさを味わえる素地を育てるために,音が重なり合うことによって生まれる響きを感覚的にとらえて,合唱の表現活動ができるようにする。
そのためには,ユニゾンを美しくする。ピッチをそろえて,和声に発展する基礎をしっかりと整える。この教材は,3度の和音が大部分なので,その感覚に慣れさせる。
ブレスは,自由である。しかし,ブレスのために和音の乱れが生じないよう呼吸法を工夫することが大切である。いいかえれば,よく支えられた声で,自分の声を聴きながら,他人の声ととけ合わせるように工夫させる。なお,“もみじ”を歌唱するために心掛けるとすれば,この和音感覚を養う練習は,やわらかい声でレガート唱で行うことが望ましい。あくまでも,その時間の学習目標とかかわりのあるところで感覚を育てることが生きた学習となるのである。
次に,学習指導要領では表現の能力に関しての指導事項に,4年生においては“呼吸の仕方に気を付けて頭声的発声で歌うこと”と示されている。呼吸の仕方を工夫することにより,一層充実した歌唱表現が可能になるものと思う。美しい声と豊かな響きを作りだすためにも安定した呼吸の仕方が大切であると考える。
ここでは,呼吸法について述べることにする。
(6) 練習法(2) 呼吸法について
歌唱における呼吸は,平常無意識のうちに行っている呼吸を基盤にして,呼気を歌唱の原動力にすべく,発声器官に無理なく働きかけるものである。したがって,ムラのない息の出し方,強弱を自由にあやつる息の支え方,声帯を振動させるのに無理のない呼気・吸気を使いこなす出し方などを身につけることが大切である。
呼吸の仕方としては,大きくわけて,
・胸式呼吸法
・腹式呼吸法
の二通りの方法が考えられる。ここで「胸式呼吸法」と「腹式呼吸法」の差違について図示してみると次のようである。
横隔膜の位置する部分は,収縮が自由であり,練習によっては吸気に際し横隔膜を下方に,すなわち,腹部に向かって押し下げることができる。そのため,空気を多量に吸い込めることになり,発声上大切なエネルギーを蓄えることになる。安静時呼吸の延長であるこの腹式呼吸法を身に付けることによって,ムラのない息の使いかたで声の支えを十分に保つことが大切である。
・横隔膜について
横隔膜は肺や心臓を囲っている胸部と胃や肝臓のある部分,つまり腹部との間にあって両方を区分している筋肉質の膜のことを指す。歌唱のとき横隔膜は吸気によって押し下げられるように軽く支えられ,安定した息を送り出し,自由な表現の原動力となるものである。
肺は,肋骨や背骨におおわれているので,一定の空気を吸い込んだ場合は膨張し,胸部の内壁に密着する。そのため吸気の量は,おのずから限度があり,更に無理をして送り込むと,胸部や首