研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -067/090page

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生徒指導全体計画作成・改善の視点

経営研究部  斎藤 洗旦
         松本 喜男

1.はじめに

生徒指導の実際においては,突発的なことが多く,その場のケースによって臨機に対処し,指導することが多い。だから,計画をつくったとしても計画どおりにはいかない,という声を聞く。たしかに問題行動の処置に追われている学校にあっては,その感は深いといえよう。

しかし,反面生徒指導には,本来の生徒指導すなわち,開発的指導も常時進めていく必要がある。問題行動の処理にのみ生徒指導の中心をおけば,最後まで問題行動の後を追いかけるという消極的な姿勢に終わってしまい,生徒指導本来の開発的指導が忘れられてしまうおそれがある。学校の教育活動における生徒指導を適正に進めるためには,生徒指導の全体計画を作成し,全教師の共通理解を図る必要がある。

いまや,生徒の問題行動は,戦後第3のピークをむかえ深刻化し,それがいつまで続くのか,見通しも立たない状況にある。それだけ切実で,その対応は避けて通れないのが学校の現実である。生徒指導はいうまでもなく,教師の全員参加による推進が欠くことのできない要件である。そのために,教師全員が計画の段階から参加し,共通理解を図り,実施,評価についても全員でかかわる必要がある。いわゆる,全員参加による学校経営的視点が重要である。全体計画を作成するに当たっては,この視点から見直す必要があろう。次に生徒指導は領域のないものであるから,「いつ,どこで,どのように,だれによって」生徒指導が推進されるのか,その位置づけを明確にする視点が必要である。全体計画作成・改善には,その二点を中心にして検討していきたい。

2.生徒指導全体計画作成状況

(1) 中・高における全体計画作成の現状

当教育センターの中・高生徒指導及び高等学校生徒指導講座受講者の所属する学校各20校を対象にして,全体計画の整備状況を調べてみた。調査対象が少ないので,確実な県下の実態とまではいかないが,おおよその傾向はつかめると思う。

中学校の場合,計画不十分な形のもの1,2校を含めて,20校のすべてが全体計画を作成している。そして,それは学校の教育計画の一環として作成されている例が多いようである。

一方,高等学校には,生徒指導の全体計画はあまり見当たらない。ただ生徒指導の年間計画は作成されている。中学校に比較して,計画性に欠けているといえるだろう。

生徒指導の全体計画のみならず,教育計画という学校の全体計画が系統的にまとめられているところが少ないところから,中学校と高等学校では,学校経営の面で伝統的に異なった行き方をしているように思われる。もちろん,高等学校の中には,全体計画の形式にとらわれないで,すぐれた生徒指導計画が作成され,実践されている県中地区のK工業高等学校のような例もある。

それにしても,高等学校の場合,生徒指導の指導態勢を整え,教師全員が生徒指導の全体構想のもとに生徒指導を推進するために,生徒指導全体計画を早急に作成する必要があるのではなかろうか。

この全体計画については,生徒指導の手引に「学校の包括的な教育計画の一環として,生徒指導の全体的計画が作成されて,さらにその各


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