研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -068/090page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

部門ごとの計画が立てられて,それに基づいて生徒指導が意図的に実施されていくようになっていることが望ましいわけである」と述べている。また,同時に「もとより生徒指導では,いわば偶発的な問題処理を行うような場合も少なくないが,それは,ある意味では,生徒指導の計画の弾力的な取り扱いとも考えられるものであり,少なくともそれは,生徒指導計画を否定する理由とはなりえない」と述べている。

たしかに計画化は困難な面もあるが,生徒指導目標の具現化の構想ともいうべき全体計画がなければ,生徒の問題行動の対処に引きずられ,生徒指導本来の開発的な性格を見逃すおそれがある。

生徒指導についての委員会や協議会等における話し合いなどで,生徒の問題行動の処理・治療に議論が集中し,生徒指導本来の目標である開発的指導にまで議論が進まないで終わってしまうのは,いささかもの足りない感がする。

また,経験の浅い教師の中には,生徒指導を非行対策と認識している場合もあり,生徒指導に対する共通理解と関心を高めるために,この際,高等学校でも,全教師参加による生徒指導全体計画を作成し,本来の生徒指導の積極的な方策を指向したいと考えるのである。

(2) 全体計画作成の手続きについての認識

生徒指導に教師全員の参加を促進するためには,計画の段階から教師全員の参加を得ることが,学校経営の視点から,基本であると考えられる。つまり,生徒指導の実施に当たって,計画,実施,評価の各段階に合理的なプロセスが重視されないと,生徒指導についての教師の認識が不十分だったり,不安が生じたり,骨惜しみや過去の経験への執着という抵抗が生じたりする。それを防ぐためには,各組織間や教師個人間の編成参加活動の連絡,調整に努めなければならない。そこで,全体計画の作成の手順にそって,教師がどうかかわったか調べてみることも,参考になるものと考えた次第である。

当教育センターの講座受講者,中学校85名,高等学校64名を対象にして,アンケートを試みた。研修生は県下全般から参加するので,県下のおおよその傾向を知る手がかりにはなるであろう。

[1] 生徒指導の重点目標

生徒指導の全体計画も他の教育計画と同じく,学校の教育目標の具現化を図るためのものである。学校の教育目標を生徒指導の立場から具体化して,生徒指導の目標から,さらに年度の重点目標に下ろしていくことになる。

今回,「生徒指導の重点目標」の設定状況をたずねたところ,表2のように,「設定している」と答えているのが,中学校90%,高等学校91%と大部分の教師が作成しているとしている、しかし,「設定していない,わからない」と答えているのが中学校10%,高等学校9%となっている。

「すべての教師が,いつでも,どこでも」指導するのが生徒指導であるとするならば,全員にこの重点をおさえてもらいたいものである。

表2:生徒指導重点目標設定状況
中 N=84,100%
高 N=64,100%
調査項目
ア.生徒指導の重点が設定されている 90 91
イ.生徒指導の重点が設定されていない 6 4
ウ.わからない 4 5

[2] 生徒指導の重点目標設定の手続

学校経営は,教師全員の自発的な協力によって,その効果が期待できる。校務を割り当てられたという印象をなくすようにし,自分から積極的に校務に取り組む姿勢をとり,教師の一人一人の能力が最大限に生かされるようにしなければならない。そのためには,教育目標設定の段階から,全教師参加のたてまえを重視していきたいものである。

さて,生徒指導の重点目標に教師が,どうかかわっているかを調べてみると,表3のような状況である。「生徒指導部が中心になって作成した」が,中学校59%,高等学校71%で.高等学


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。