研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -027/071page

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8. ア,「銅の酸化」の実験と考察

(1) 銅粉の加熟のしかたを,つぎのような方法で行う。
1.はじめに,やや弱い炎で加熱する。
2.銅粉全体がほぼ黒くなったら加熱をやめ,さらの底の黒いかたまりをかくはん棒で細かくくだく。
3.かくはん棒でよくかきまぜながら,さらの底が暗赤色から桜色になる範囲で強熱する。
※上記の方法で加熱すれば,理論値に近い値が得られる。

(2) ステンレス製玉しゃもじの使用
1.市販されているステンレス製玉しゃもじは,安く購人でき,しかも柄の部分を切断してかくはん棒として利用できる。
 実験用ステンレスのさらでの実験とほぼ同程度のデータが得られる。
2.底が丸いので三角架にのせても安定しており,かくはんの際にも便利である。

(3) 銅粉は,できるだけ細かいもの( 250〜300メッシュ)で,純度の高いもの( 99.5% )を使用する。
 また,よく乾燥したものを使用する。一度開封したものは,事前にデシケーターでよく乾燥する。

(4) この実験では,おもに,「問題が発見できる能力,データを解釈する能力,モデル化する能力」を育成する。

(5) 銅の酸化の実験を通して,酸化の概念を把握させ,その過程や反応の際の物質の質量変化のデータを解釈させて定比例の法則を操作的に定義する。この場合,生徒の実験技能から考えて,生徒の実験データだけからでは,法員を導きだすことは困難であるので,適切なデータを与えて考察させる。

(6) 教科書では,実験データからグラフ化させているが,ここでは,生徒に思考の混乱をさける意味でも比を求めさせ,考察させていくことがのぞましい。

(7) ここでは,特に,粒子の概念を導人して酸化反応の様子を考察させていく。


<銅の酸化に関する実験データ>

a 銅粉の質量 b 加熱後の質量 b-a 増加量 b/a Cu0/Cu 理論値との比較
0.55(g) 0.72(g) 0.17(g) 1.30 0.05
0.65 0.83 0.18 1.28 0.03
0.75 0.95 0.20 1.27 0.02
0.85 1.07 0.22 1.26 0.01
1.00 1.23 0.23 1.23 0.02
1.20 1.50 0.30 1.25 0.00
1.40 1.75 0.35 1.25 0.00
1.60 2.00 0.40 1.25 0.00
1.80 2.24 0.44 1.24 0.01
2.00 2.45 0.45 1.23 0.02
2.50 3.06 0.56 1.22 0.03
3.00 3.64 0.64 1.21 0.04
3.50 4.27 0.77 1.22 0.03
4.00 4.87 0.87 1.22 0.03
4.50 5.49 0.99 1.22 0.03
5.00 6.09 1.09 1.22 0.03

※質量は,すべて電子てんびんを使用


○銅粉が1g以下の実験では,質量比が理論値より大きいデータが得られた。
○銅粉が1g〜2gの間では,ほとんど理論値に近いデータが得られた。
 したがって,生徒実験では1gから5g以内の銅粉を使用して実験させるのがのぞましい。

 銅の酸化の実験を通して,酸化の概念を把握させ,その過程や質量変化のデータを解釈させて,「物質はいつもきまった質量の割合で化学変化がおこる。」という,すなわち,定比例の法則を導きだす。


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