研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -028/071page
イ、「酸化銅の還元」の実験と考察
(1) 還元剤として,燃料用メタノールを使用
1.教科書では,炭素の粉末を還元剤としているがデータにバラつきが生じやすい。原因としては,炭素粉末が湿っている場合などが考えられる。2.燃料用メタノールを還元剤とした場合,データにバラつきが少なく理論値に近いものが得られる。
欠点としては,反応の途中でホルムアルデヒドやギ酸が生じ,すぐに,二酸化炭素が発生しにくい点であるが,反応が進むにつれて二酸化炭素が発生することを確認することができる。
反応は,つぎのような順序でおこる。したがって,誘導管から出る気体は最終的には二酸化炭素となるが,石灰水中ですぐ白濁しないので水を使用した方がよい。還元反応完了後に石灰水を入れ,白濁することを確認させることが可能となる。
酸化銅と還元に要するメタールとの質量比は,となり,約8gの酸化銅を還元するためには約1.0cm 3 のメタノールがあればよい。
炭素の粉末の場合,酸化銅1.6gを還元するのに約0.12g必要となる。
短時間(3〜5分)で還元することができ,しかもアルコールランプの炎でも還元できる。(2) 燃料用メタノールは白墨(ダストレスでないもの)に浸みこませる。
白墨は加熱してもあまり変化せず,危険性がない。ただし,メタノールを浸みこませすぎると試験管を割る危険性があるので留意する。(3) 試験管はやや太めのものを使用し,反応のようすを観察させながら実験させることによって,「観察ができる能力や問題が発見できる能力」を高めることができる。
(4) アルミニウムはくの皿の利用
1.アルミニウムはくを適当な大きさにカッターで切り皿をつくる。
2.アルミニウムはくの皿に酸化銅を乗せて試験管の中にこぼさないように入れる。
<酸化銅の還元に関する実験データ>
b加熱後の質量(g) c還元後の質量(g) b-c 減少量 b/c CuO/Cu 理論値との差 1.23g 1.00 0.23 1.23 0.02 2.45 2.00 0.45 1.283 0.02 3.06 2.50 0.56 1.22 0.03 3.64 3.00 0.64 1.21 0.04 4.27 3.49 0.78 1.22 0.03 4.87 4.00 0.87 1.22 0.03 5.49 4.49 1.00 1.22 0.03 6.09 5.00 1.09 1.22 0.03 ※質量は,すべて電子てんびんを使用
(5) 還元時の加熱は,銅の酸化の場合ほど強熱する必要はない。強熱しすぎると,試験管がこわれたり,アルミニウムはくの皿がもろくなって穴があくので注意する。
(6) 還元後,試験管が冷却してから生成物(銅)の色をよく観察させる。
(7) 銅の酸化,酸化銅の還元における質量の増減を粒子モデルを使って考察させる場合,あまり粒子モデルにとらわれないよう配慮する。