研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -029/071page

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9. 自然を調べる能力・態度化をめざす指導

(1) 実験・観察を主体とする学習においては,「問題が発見できる能力」を必要とする。
 この場合,直観的な思考カが作用する。ここにいう,直観的な思考力とは理論をたどって推論することなく,いっきに対象の本質をとらえる能力であると定義されている。
 これは,対象の内部に立って直接内部を見る能力(=内部に立つとは,自己と対象とが一体化の状態に近づき,夢中,ひたむきの状態になることで,強烈な探究心をもつものであるといわれている。)のことである。
 内的動機づけとしての演示の工夫と生徒実験の改善がのぞまれる。

(2) 学習の仕方や探究の方法を理解させ,創造的能力のモデル化や伝達的能力の発表力を高め,育成していくには,一人一人の生徒が必要な知識を身につけ,具体的な探究過程の中で自分の考えや行動の適否を自己評価し,考えや行動を改善しながら結論へと自己の行動を導いて行くことのくりかえしによるしか道はないと考える。すなわち,自ら考え,実行する方向性を自分で獲得することがより重要となる。
 このような考えから,自己評価のあり方をさらに検討してとりくませていくようにする。

(3) 教師の問題提示による一人一人の思考活動の助長は,問題解決能力を育成する場合特に重要となる。具体的な教具,学習教材の準備と並行して,教師の発問による個々の発想,それにもとずく検証活動,小集団による討議などをさらに積極的にとり入れて問題解決能力を高めていくことによって,自然を調べる能力・態度へと発展していくものと考える。

(4) 学習指導要領の目標である「自然を調べる能力・態度」を育成するには,その都度,教材分析や目標分析などを通して指導過程に位置づけ,意図的,計画的な指導をしていく必要がある。
 この場合,問題解決能力と教材内容関係マトリックス表を作成しての指導が有効となる。



10. おわりに

 自然を調べる能力や態度を育成する過程において,特に重視されている問題解決能力の育成を図る指導のあり方について,化学の基本法則を例としてのべてきたが,一人一人の生徒が理科の学習を通してしっかりした自然認識をもつ過程を明確に把握しておくことが基本となる。すなわち,自然の事物・現象に興味・関心をもつことから問題意識は生れ,この問題解決のために観察・実験によって情報を収集し,収集した情報を科学的思考力を働かせて処理すること,このことは,規則性の発見能力や関係づけたりする能力へ発展していく。このような活動を化学の基本法則の学習の中で行うことによって自然認識は深まり,広まっていくものと考える。そのための指導・援助とのぞましい実験のあり方についてさらに検討していきたい。



< 参考文献 >

○中学校指導書 理科編 文部省
○授業過程における評価 北海道教育研究所
○化学  林 良重,若林 覚著 講談社
○理科の教育11・12・1月号 東洋館
○化学実験辞典 赤堀四郎,木村健二郎 監修 講談社
○実験観察教材教員 芦葉 久 編集 東 書
○小・中理科薬品と管理に取扱いハンドブック 長谷川秀吉著 東洋館
○理科教師用指導書1分野(上) 大日本図書
○新しい科学教師指導書1分野(上) 東書
○中学校 理科教育法 安田猛男,木谷要治 著 図書文化
○身近な自然を重視した理科指導 文部省
  ※銅の酸化と酸化銅の還元の実験例引用  

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