研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -040/071page
[ アルゴリズム ]
F=AsinUX,G=BcosVX,Y=F+Gにおいて,データとしてA,U,B,Vを与えると,まずF,Gの二つのグラフを同時に描き,次いでYのグラフを描くようにする。流れ図は図10のようになる。[ 描いたグラフと考察 ]
図11は,データA,U,B,Vを与え,パソコンで描いたグラフで,点のまばらな曲線がF,G,点が密集しているのがYのグラフである。
周期が同じ場合には,単振動の合成がまた単振動になることを加法定理を用いて示したり,合成のグラフを描くことを学習することもあるが,周期が異なる場合には,単振動の合成を学習することは少ない。そのためか,生徒の中には,ややもすると単振動を合成したものはつねに単振動であると勘違いする者もいる。この例のように,A,U,B,Vを与えさえすれば,パソコンは即座にグラフを描き,周期のちがいにより,その合成のグラフはさまざまな波形になって現れる。このことから,単振動の合成が単振動になるのは特殊な場合であって,一般には単振動にならないことが視覚的に理解できよう。
生徒たちの周囲には,いろいろな音や振動があるが,その中には単振動を合成した波形に近いものもあることを視覚的にとらえさせ,単振動を身近な教材として認識させたい。
また,ドットプリンターが打ち出す点の動きや描いたグラフの点の集積の度合いなど,導関数を利用してグラフを追跡する場合には得られない感触を生徒に味わわせたい。以上,六つの例を示してきたが,各例で作成した数値・数表・グラフを生徒に提示する場合,授業が生徒たちにとって受動的にならないよう配慮する必要がある。例えば,パソコンが打ち出した結果だけを提示するのではなく,生徒にパソコンを操作させるなど,生徒にパソコンとなんらかのかかわりをもたせる必要があろう。
また,パソコンを「教具として」活用する場合,何でもパソコンを利用するというのではなく,パソコンを使えば大変便利なことやパソコンでなければできないことを取りあげることが大切であろう。したがって,指導計画を立案する段階で,生徒の実態を考慮してどんな場面(教材)でどんな具合にパソコンを活用するかを十分検討して,単元の指導の流れの中にパソコンの活用を位置づけることが肝要であろう。そして,パソコンは,数学を学習するときに,それを補助する道具として位置づけておきたいと思うのである。