研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -047/071page

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る。粒子を生徒と置きかえて,世界の各界にチャレンジできる人材養成を,と言いたいのである。
 これまで述べたことから,育つための最小のエネルギーチャージを持つ児童生徒を何によって加速するかが大切である。教師主導ならば指導法であるという答えが来るかも知れない。しかし,学習させる内容の与え方のみでは本物の学習にはなり得ず,教師以上の人物には育て得ない。本物の教師には最低レベルの児童生徒でも,自分以上のものにするという意気込みと指導行為がある。そして,それを成就させるには,教科のもつ領域に精通し教材化する力がある。これが加速するはたらきをもつ電極にあたる。リニアックには多くの円筒状電極があり,電極間で加速させる構造をもっている。
 最初の電極は教科のもつ認知的な「学習項目・学習内容」の精選であり,それを効果的に成立させ得る「教材・教具」の提示でもある。次の電極は「教師の指導方法」や「教師の教育的姿勢」となる。これが交互に一直線上に並び目標に到達させるよう加速が行われる。また,言い方を変えるならば学習項目,学習内容はあらかじめ定めたものであり,教材・教具はそれを達成させるために教師が用意するものである。従って,授業前に準備された静的電極であると言える。次の電極は生徒の実態に応じて種々の学習指導が考えられたり,教師の人格のすべてを効果的に生かしこむ電極で,教師自身が相手の変化に対応し,行動する動的電極であるといえる。
 この学習系統は児童・生徒全員を学習到達目標に向かって到達させる構造であり,習熟の程度に巾がでては後の学習が不成立に終わる最も基礎的な段階を示した。また,学習指導形態の面から考えると一斉指導の場合のとらえ方(註10)ともいえる。

リニアック型学習理論モデル



(2) サイクロトロン型学習理論

 これは学習者の基礎的な学力がリニアック型学習理論で示したチャージのごとく,低レベルから中レベルのエネルギーに育った場合に効果がある。しかも,サイクロトロン型学習理論は,習熟の程度に差がある場合,同一な学習内容でもそれぞれ個に応じた学習が可能であることを示している。
 前述のリニアックの電極と異なり,ここではローマ字のD形で「ディ」と呼び,学習の場を表す。
 ここの電極は「学習項目・内容」や「教材・教具」を「経験レベル」と「思考レベル」の二つに分けてある。
 ここで,学習が加速され,円形軌道を進むために教師のマネージメントが磁束の大きさとして与えられることになる。磁束は全粒子に等しく与えられても,粒子のチャージが異なるので回転半径も異なり,それなりにエネルギーの増大が図れるということになる。これがマルチ構造の電極のはたらきである。マネージメントはエネルギーの増大を効果的に果す役割を持っていても,直接エネルギーの増加を促す役割のないことがわかる。これは先に揚げた(註2)の実践から分析し得た結果であった。

サイクロトロン型学習理論モデル
サイクロトロン型学習理論モデル


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