研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -057/071page
OHP活用の現状と課題解決の手だて
教育研究部 山田 明 植田 守
1. はじめに
教育現場では,一人一人を生かした学習指導を実施することの大切さが認識され,「わかる授業」「できる授業」をめざした教育が盛んに行われている。
また,現代のような科学技術の進歩に伴う技術革新の時代では,ますます教育機器の開発が盛んになり,個人差に応じた学習指導展開のために,機器の利用が盛んになってくるものと思われる。文部省刊,「学校における視聴覚教材の利用」の中でも,「視聴覚教材は感覚的・具象的であり,それだけ写実性や迫真性も高いので,児童生徒への興味を喚起し,学習意欲を盛んにすることができる」と述べているように,視聴覚教材の利用が学習指導に果す役割は大きい。
一方,今回の教育課程の基準の改善に関する答申の中でも,教育課程の効果は,各教科における自発的,創造的な活動に期待するところが大きいとしながら,「・・・教育の実際の場における指導方法の向上を図る必要がある」と述べ,学習指導の質的な改善・充実を強調している。
福島県教育委員会昭和58年度学校教育指導の重点の中で,「自ら考え正しく判断する能力,創造的な能力,主体的に学習する能力を育成するため,教材・教具の開発と適切な使用によって指導の改善を図ること」を取り上げている。これは,今回の教育課程基準の改善の趣旨の実現をめざすものであり,学校教育における視聴覚教育,教育機器利用の積極的な取り組みを示唆するものであると思われる。
このような視点に立って,教育現場の実際に目を向けたとき,視聴覚教材,教育機器の学習指導への効果的な活用が必然的に求められる。
このことは,児童生徒一人一人の個性や能力に応じた学習指導へと結びつくものであり,その教師の希求と実践が,「わかる授業」,「できる授業」,「一人一人を生かす学習指導法」の創造につながっていくものと考える。
本研究は,教育現場に一番多く普及している教育機器であり,しかも,その機能と特性を生かした活用で,教育効果の増大を期待できるOHPについての調査研究である。広く教育現場の実態を調査し,その問題点・課題を明らかにし,学習指導の質的改善につながるOHPの効果的な活用を追究する意図から,この研究に取り組んできたものである。
2. アンケート調査の目的・内容
(1) 調査の目的
学校におけるOHPの保有台数や利用の状況並びに,利用の際の困難点などの実態を把握し,その分析・考察から,OHP活用の阻害要因を究明し,効果的な活用の方途をさぐることを目的とした。
(2) 調査内容
1.教育機器の利用状況
2.OHP・TPに関する関心
3.OHPの保有台数
4.OHPの利用状況
5.OHP利用のねらい
6.市販TPの在庫量
7.授業で利用するTPの種類
8.OHPに関する研修
9.OHP活用上の困難点
(3) 調査対象者数