研究紀要第54号 「教育課程の実施に関する研究」 -068/071page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

もっている。しかし,授業に必要なTPをすべて自作することは,時間,労力の面から考えて不可能に近い。
 市販TPを効果的に利用することが,今回の調査結果にも見られるように,TP製作の時間,道具・材料不足を補うと同時に,OHPの活用にもつながるものである。
 市販TP整備の視点としては,指導計画・児童生徒の実態・教師の利用傾向をもとに,長期的展望のうえに立って行われるべきである。
 市販TPの選定の観点としては,次のような点が考えられる。

 ・ 学習指導のねらいに即したもの
 ・ 鮮明で見やすく,実物に忠実なもの
 ・ 統計資料や用語が最新のものであり,正確なもの
 ・ 文字や絵の大きさが適当なもの
 ・ 焦点化された内容のもの
 ・ 提示の仕方が容易なもの
 ・ 自作TPと併用したり,教師の意図により,組み替えが可能なもの

 最後に,TPの自作について述べてみる。
 OHPの教育的機能と特性をじゅうぶんに発揮させるためには,TPが,学習のねらいに合った「内容,段階(場面),方法」で提示されることが不可欠な条件である。
 上記のような点を満足させるには,TPを自作することが,必然的に要求される。
 授業においては,一人一人の児童生徒に,必要な教材の提示や学習活動の指示が確実に伝達されなければならない。
 授業のねらいに合った教材や児童生徒の理解や思考に即したTPを求めようとすれば,やはり指導者である教師の手によって作られたものが最適であろう。それは,児童生徒の実態を的確に把握している教師のみが可能であり,自作の意義もここにあるのである。


6. おわりに

 この紀要では,県内の小学校・中学校におけるOHP利用の実態を把握するため,アンケートによる実態調査を行った。そして,その結果から,問題点を明らかにし,課題解決の手だてを明らかにすることによって,OHPの効果的な活用の方途をさぐってきた。
 この調査から明らかになったことは,

 ○ 先生方のOHPについての関心は非常に高いこと
 ○ 教育機器の中で,一番活用されているのはOHPであること
 ○ 各学校では,使用に支障をきたさない程度に,OHPがほぼ充足されていること
という点である。
反面,問題点としては,次のようなことがあげられた。
 ○ より一層,OHPを活用してほしいこと
 ○ 自作TP使用者が多いので,市販TPの充実をはかること
 ○ 製作時問の不足,道具・材料の不足などのソフトウェア製作面の改善を図ること
 ○ 学習指導への位置づけ,活用のし方になお一層の工夫を加えること

 OHPには,すぐれた特性がたくさんある。しかし,万能ではないし,他の教育機器のもつ特性をすべて包含しているものでもない。
 OHPのもつ限界を的確に理解したうえで利用することが「真の活用」と言える。
 児童生徒一人一人を伸ばすために,OHPを授業の中に,どのように位置づけ,活用していったらよいかは,日々の授業実践の中で高められていくものと考える。
 最後に,アンケート調査を実施するにあたり,御協力いただいた県内小・中学校の諸先生方に対し厚く御礼を申し上げたい。

参考文献
・OHPを生かす新技法
    岸本唯博・森正康 学習研究社
・教育機器・視聴覚教材の整備と活用
    東京都小学校視聴覚教育研究会編 明治図書


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。