研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -019/076page
内燃機関の性能試験
― 水冷ガソリン機関の計測と性能計算の実際 ―
科学技術教育部 笹川 征喜
1.はじめに
内燃機関は熱エネルギーを機械的エネルギーに変換する機械である。熱エネルギーを連続的に機械的エネルギーに変換するためには,高低両熱源と媒体となる作動流体が必要である。
作動流体は高熱源から得た熱エネルギーの一部を機械的エネルギーに変換し,他を低熱源に放出してもとの状態にもどる。また,高熱源から得た熱エネルギーしか機械的エネルギーに変換できないことは熱カ学の第2法則が示している。
この熱エネルギーの出入り関係が内燃機関の基本的な熱カ学的性能であり,第1表に示す計測項目と性能計算項の関連で示される。
中学校における内燃機関の指導においては,この熱カ学的性能の考え方を中核にすえ,内燃機関を整備し操作する実践活動を通して,目的に応じてエネルギーを変換し利用する仕組を理解させることが大切であると考える。
しかし,内燃機関の性能に関する内容についてはほとんど取り扱われていない現状にある。そのため,内燃機関の性能に関する指導法を授業公開を通して提案してきたが,なんといっても指導者の自らの手で計測し,性能計算をする中から,指導資料を作成し,必要とする教材教具の開発に当たることが必要と思われる。
しかし,内燃機関の性能試験に関する平易な解説書は入手しがたい。そこで,中学校担当教員を対象とした第1表に示す計測項目について,計測の概要と計測値をもとにした具体的な性能計算の方法をまとめ,研修の手引きとして使用しているので,その概要を報告する。