研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -047/076page

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「診断と治療」を取り入れた作文指導

教科教育部  星 英雄

1.はじめに

 国立国語研究所報告63「児童の表現力と作文」(東京書籍)には,興味ある諸種の作文調査やアンケート調査が報告されている。その中のアンケート調査の一つに,「あなたは作文を書いてから,何日ぐらいでかえしてもらってきましたか。」

 ア 2・3日ぐらい  イ 1週間ぐらい  ウ 2週間ぐらい エ 1 か月ぐらい オ 2か月ぐらい  カ 1学期ぐらい  キ かえしてもらわなかった  ク その他

 の設問について,最も多い回答は, 「キ」の「かえしてもらわなかった」23・3・%であったという。

 児童生徒に作文を書かせても,多くは作文を書かせっぱなしだったり,完成時から日時がだいぶ経過してから返却しているようであり,書かれた作品があまり事後の指導に役立てられていないのではないかと思われる。

 ところで,作文の学習の成立は,国語科における他の領域分野の学習に比して,より以上に個々の児童生徒の営為に負うところが多いのであるから,一斉指導にのみ頼ることなく,一人一人の児童生徒の個を生かした指導が望ましい。したがって,児童生徒に作文を書かせたら,すみやかに評価処理して返却しなければならないのはいうまでもないが,特にその評価処理に当たっては,一人一人の作品を熟読して,それらの作品の長所・短所を的確に把握し,それらに基づいて一人一人の児童生徒の個に応じた指導を行い,個々の児童生徒の次時の学習の発展に役立てることが大切である。

そこで,教師が,作文指導の指導過程の中で,いつ,どこで,どのように個をとらえ,それに応じた指導をどのように行えばよいか,すなわち「作文指導における診断と治療」について,その具体的な手順,方法のいくつかの事例をあげながら,考察をすすめてみたい。

2.問題点,原因とその解決策

 作文指導において,いかなる場所で,どのように指導し,それをどのような観点で評価し,さらにその結果に基づき,どのように指導しているかなど すなわち「作文指導の診断と治療」の実態を知り,「作文指導における診断と治療」の問題点とその原因・解決策についての手がかりを得るため,また,国語教師が作文指導上で当面問題になっている実態を把握するために,次のようなアンケート調査を試みた。

(1)調査の対象

 昭和59年度福島県教育センタ―主催の中学校国語講座受講者を対象に謂査票を配布し,回答を得た。

(2)調査の期間

 昭和59年11月17日〜昭和59年11月30日

(3)調査票配布数 42人

(4)調査票回収集 35人

(5)回収率 83%

(6)調査内容と結果の考察

〔設問1〕あなたは,作文を生徒に書かせるとき,取材・構想・記述・推敲など観点をしぼって指導していますか。

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