研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -061/076page
器械運動における小・中,高等学校の一貫性の構造化と指導の在り方
教科教育部 深谷 秀三
○ はじめに
体育(小学校),保健体育(中・高等学校)の学習指導要領で特徴的なことは,目標を小・中・高等学校の一貫性の観点から,各学校段階で果たすべき役割を総括的に示し,内容は,目標との関連から学校や教師の創意を生かした指導ができるようにするために,従来の運動領域の整理統合や内容の精選を図り,基本的な事項(小学校,中学校)領域名や種目名(高等学校)を示したことである。したがって,体育,保健体育の学習指導に際しては,これらの目標や内容について,小・中・高等学校一貫性の観点から系統的,発展的に把握し,児童生徒の発達的特性や運動の特性に基づいて指導することが大切である。
この研究は,器械運動の領域について,小学校,中学校及び高等学校の学習指導要領並びに指導書及び学習指導要領解説に基づき,技能内容の小学校,中学校及び高等学校の一貫性の構造を明らかにするとともに,小・中・高等学校の一貫性のうえにたった学習指導と評価の在り方についてまとめたものである。
1.学習指導要領の改訂の方針と要点
昭和51年12月に示された教育課程審議会の答申で,教育課程の基準の改善のねらいを,自ら考え正しく判断できる力をもつ児童生徒の育成ということを重視しながら
(1)人間性豊かな児童生徒を育てること。
(2)ゆとりのあるしかも充実した学校生活が送れるようにすること。
(3)国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視するとともに児童生徒の個性や能力に応じた教育が行われるようにすること。
と示している。
これらのねらいの達成を目指すために,小学校,中学校及び高等学校の教育を一貫的にとらえることが必要であり,小・中・高等学校の教育課程は,その全体を一貫的に把握した場合,小学校及び中学校についてはおおむね基礎的・基本的な内容を共通に履習させる段階として位置づけ,また,高等学校については―般的には個人の能カ,適性等に応じて選択履習を重視する段階として位置づけるのが適当であるとしている。
また,体育,保健体育の改善の基本方針としては,小・中・高等学校を通じて,健康の増進や体カの向上を図り,強健な心身を養い,また,生涯を通じて運動を実践する態度や能力を養うとともに健康な生活を営むことができるようにし,児童生徒の心身の発達の特性を考慮して内容を基礎的・基本的な事項に精選することを挙げている。
これを受けて,体育,保健体育の学習指導要領は,次のような基本方針により,従前の学習指導要領を改訂して作成されている。
○ <小学校>
(1)健康の増進と体力の向上を図り,強健な心身を養うこと。
(2)生涯を通じて運動を実践する能カや態度を養うとともに健康な生活の実現に必要な能カや態度を育てること。
(3)児童の心身の発達や特性及び運動の特性を考慮して内容を基礎的・基本的な事項に精選すること。
(4)正しい運動の仕方を身につけさせ,各種の運動の基礎的な能力を養うとともに,身近な 生活における健康に必要な知識の習得に重点を置くこと。
○ <中学校>
(1)健康の増進と体カの向上を図り,強健な心