研究紀要第58号 「教育課程の実施に関する研究」 -062/076page
身を養うこと。
(2)生涯を通しての運動の実践や健康な生活の実現に必要な能カと態度を養うこと。
(3)内容を基礎的・基本的な事項に精選すること。
○ <高等学校>
(1)健康の増進と体カの向上を図り,強健な心身を養うこと。
(2)生涯を通じて運動を実践する能カや能度を育てるとともに健康な生活を営むことができるようにすること。
(3)内容を基礎的・基本的事項に精選すること。
以上の中で,今回の基本方針の特徴は,生涯を通して運動に親しむといういわゆる生涯スポーツを重視した点である。学校の体育が学校の教育の中だけで考えられがちだった従来の考え方から抜け出して,生涯スポーツという人間の一生にかかわる問題の中で,どんな役割を果たさなければならないか,という発想の転換がみられたことは,戦後の改訂された学習指導要領の歴史の中でも大きな意義を有していると言える。
2.体育・保健体育の目標
体育・保健体育の目標は,改善の基本方針を受けて,小・中・高等学校の教科としての果たすべき役割を,生涯スポーツを見通し,小・中・高等学校一貫性のうえにたって総括的に,しかも,簡潔に示された。
○ 小学校
適切な運動の経験 を通して運動に親しませるとともに,身近な生活における健康 ・安全について理解させ,健康の増進及び体カの向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。 ○ 中学校
運動合理的な実践 を通して運動に親しむ習慣を育てるとともに,健康・安全について理解させ, 健康の増進と体カの向上を図り,明るく豊かな生活を営む態度を育てる。 ○ 高等学校
健康や体カについての理解と 運動の合理的な実践 を通して,健康の増進と体カの向上を図り, 心身の調和的発達を促すとともに明るく豊かで活カのある生活を営む態度を育てる。 上記のように,それぞれの目標の示し方は,共通して目標に近づくための方法(何を,どのように)を示す部分と学習指導の結果,最終的に児童生徒に成就させるものを示す部分とから成り立っている(表1)。この目標から,小・中・高等学校が共に関連する部分を取り出して分析してみると,小・中・高等学校の一貫性のかかわりをとらえることができよう。ここでは,目標に応じた運動のさせ方について,小・中・高等学校それぞれについて分析してみた。
○ 「適切な運動の経験」 (小学校)
児童の心身の発達や運動の特性との関連を考慮して,体の発達刺激として,また,運動技能や体カの向上を目指す観点から望ましい運動を選び,その運動の量,質,系統性などを考慮して適切に行うことを目指している。また,児童の立場からの運動の欲求の充足や運動の楽しさが体得できるためのふさわしい内容が用意され,それが適切に経験できることを目指している。
○ 「運動の合理的な実践」 (中学校)
中学生の発達に即した運動を科学的な基礎に立って,実践していくということを示しているもので,単に運動を行わせることだけで心身の発達や技能の習得をねらうというものではない。運動の特性,運動と心身のはたらきの関係,健康と環境あるいは健康と生活など体育に関する知識や保健分野の内容などの科学的理解に基づいた運動の合理的な実践を目指している。
○ 「運動の合理的な実践」 (高等学校)
高校生の生徒の発達や生活の実態からみて