研究紀要第60号 「『関心・態度』の評価に関する研究」 -000-01/049page
ま え が き
新教育課程の実施に当たって要請された授業の質的転換を図るため,ここ数年来,教育評価についての関心が高まり,学習指導の実践現場である各学校においては,多様な評価活動が試みられるようになってきた。福島県教育委員会策定の昭和59年度「学校教育指導の重点」の中でも,学習指導の質的な改善・充実を目指し,指導と評価の一体化を図るため評価方法の工夫について努めることを取り上げている。
当教育センターでは,評価を教育活動の一環としてとらえることは,一人一人の児童生徒の個性や能カを十分に理解し,より確かな授業を具現する上から重要な課題と考え,昭和58年度から3か年にわたって,「学習指導と評価に関する研究」に取り組むことにした。
第1年次は,教育評価に関する資料収集・文献研究など基礎的研究とともに,県下小・中・高等学校における「指導と評価」の実態について調査を行った。その結果,今後の研究課題として取り組むべき教育現場の実践的課題は,「形成的評価の重視」と「観点別学習状況の評価への取り組み」にあり,特に,関心・態度など情意面の評価への対応にあるととらえた。
昭和55年に改訂された現行の指導要録では,全教科の評価の観点に「関心・態度」を共通に取り入れている。それは,このような情意的な観点は評価に難しさがあることは事実であるが,指導と評価が知識・理解の面に偏りがちな学校教育の現状についての反省によるものであると考えられる。
更に,昭和58年11月15日付け中央教育審議会の教育内容等小委員会審議経過報告にある「自己教育カの育成」,すなわち,主体的に学ぷ意志,態度,能力の育成は,そのまま情意面の教育の重要さを示唆するものであり,児童生徒の能力,適性,興味・関心に配慮した教育活動の展開を強く求めているものと思われる。
このように,本研究の第1年次における実態調査より得られた評価活動の現状と,本研究に寄せる教育現場の要請,更に学校教育における今日的課題を考慮し,第2年次以降の研究テーマを「関心・態度」の評価に設定し研究を推進してきたのである。
本年度は,小学校社会科を研究教科とし,福島市立笹谷小学校の研究協カを仰ぎ,授業研究を中核とした研究を進めてきたが,このたび,研究成果として本紀要を刊行するものである。各学校においては,本研究の意図を十分に御理解いただき,今後の教育実践に活用されるよう願ってやまない次第である。
終わりに,本研究推進に当たり,絶大なる御協力をいただいた研究協力校の校長先生,及び研究協力委員の先生方に衷心より感謝の意を表する次第である。
昭和60年3月
福島県教育センター所長 舟 山 昇