研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -008/093page

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(4)形成的テスト問題作成上の留意点
 形成的テストの性格から考えて,その問題作成上,次の事柄に留意する必要がある。

1 問題の難しさ
 集団準拠テスト(NRT)では,得点に個人間のバラツキを作るために,難しい問題と易しい問題を適宜組み合わせるような工夫が求められる。
 しかし,形成的テストでは,そうしたことは不必要である。問題の難しさは,評価目標の難しさをそのまま反映していれば良いのである。仮に,クラスの全員が満点であっても,そのこと自体はいっこうにさしつかえないことである。

2 問題の数
 たとえば,100点満点になるように問題数をきめるなどということは,不必要である。代りに,一つの目標に対して,いくつの小問(アイテム)を準備するかが問題となる。小問が少いほど偶然に左右されやすく,不正確になりがちなので小問数が多いほうが良いと言える。しかし,小問数を多くした場合,テストの実施や採点に手間取るという別な問題が出てくる。形成的テストは,できるだけ短時間に実施,処理されることが望ましいのである。
 以上を兼ね合わせて考えて,1目標あたり3〜5小問というが適当であると言えよう。

3 作問法
 短時間で実施,処理されることが要求される形成的テストでは,論文体テストは望ましくない。また,形成的テストは,到達目標を評価するためのものであるから,客観テストによるもので十分である。

(5)評価段階と到達基準
1 評価段階
 目標に対する達成状況を表す場合,それをいくつの段階で表すかが問題となる。一般に,長期の学習内容に関して評価するときには,3段階や4段階で表すことが多い。たとえば,指導要録の観点別学習状況欄は,十分達成(+),おおむね達成(空白).達成不十分(−)と表すことになっている。
 しかし,形成的テストの場合は,個々の児童について,補充的な指導が要求される目標はどれであるかを明らかにすることが目的なのであるから,「達成」,「未達成」の2段階で表せば十分であると考える。

2 到達基準
 次に,ある目標を「達成」とみなすには,それに対応する形成的テスト問題で,最低いくつの小問が正解であればよいかをあらかじめ定めておく必要がある。このことを,到達基準という。
 この到達基準については,いまだ定説と言えるほどのものが明らかにされていない。ただ,橋本重治氏は,形成的テストの到達基準について,次のように示唆している。
 一般的にいって,形成的テストにおける基礎的目標の到達基準としては,正答率80−85%ぐらいが適当なところと考える。これを参考に,結局は学校教師の考えで決定すべきである。
橋本重治「到達度評価の研寄−その方法と技術−」
これに従えば,到達基準は,次のようになる。

表4 形成的テストによる目標の到達基準
1目標に含まれる小問数 ×0.80 ×0.85 「達成」とみなすことができる基準
3 2.40 2.55 全問正解
4 3.20 3.40 全問正解
5 4.00 4.25 全問正解または4問 以上正解

 小問数が5問の場合は,橋本氏の示す下限をとれば,4問正解以上となるが,上限をとれば,全問正解となる。本研究では,一応,下限のほうを選んで,五つの小問を含む目標は,4問以上正解であれば,「達成」とみなすことにした。


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