研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -007/093page

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クを取り上げることにする。

(2)形成的テストの性格
 前のページの表2に見るように,中期的な形成的評価の評価法として用いられるものが形成的テストである。
 形成的テストによって得ようとする指導のための情報は,次のとおりである。
 ●一人一人の児童が,基礎的な知識・理解及び技能に関する目標のうち,どれを達成し,どれを達成していないかということ。
 ●学級全体の児童が集団として,どの目標を多数の者が達成していて,どの目標を少数の者しか達成していないかということ。
 これらのことから,形成的テストは,集団準拠テスト(NRT)ではなく,目標準拠テスト(CRT)でなければならないと言える。すなわち,形成的テストにあっては,個々の児童が集団の中のどんな位置にあるかが問題なのではなく,どの目標が達成され,どの目標がされないかが問題なのである。

(3)基礎的な知識・理解及び技能にかかわる目標の選定
 形成的テストは,一人一人の児童が基礎的な知識・理解や技能に関する目標を達成しているか否かを評価するものであった。従って,はじめに行わなければならないことは,その単元(もしくは,小単元)において,どの目標が基礎的な知識・理解や技能に関するものであるかを特定することである。
 そうするためには,その単元もしくは小単元の目標群を到達目標と方向目標に分類してみることが,極めて有効であると考える。
 一般に,教育目標は,到達目標と方向目標の二つに分けて考えることができる。前者は,到達点を明確に示すことができるものであるのに対し,後者は,到達点を示しえず,漠然と努力の方向を示すにとどまるものである。この二つをより具体的に示すと,次の表3のようになる。
表3 到達目標と方向目標
  性   格 あてはまる目標例
到達目標 ・具体的な到達点が明示される。
・学習者には,その完全な達成を求めることができる。
・基礎的な知識・理解に関する目標
・基礎的な技能に関する目標
方向目標 ・具体的な到達点を明示しえない。
・学習者に,努力の方向を示すことができるが,その完全な達成を求めることはできない。
・思考力,創造力に関する目標
・表現に関する目標
・態度に関する目標

 (注)この表は.橋本重治「教育評価基本用語解説」その他を参考に作成した。

 このことから,これまでたびたび述べてきた,「基礎的な知識・理解及び技能にかかわる目標」というのは,到達目標の性格をもつ目標であると言うことができる。それは,形成的テストによって評価すべき目標であるということにもなる。P.A3の表1に示した目標群から,そのような目標を選びだすとすれば次のようになるであろう。
 ●「知識・理解」の観点に属するすべての目標すなわち,1,2,3,4の番号で表されている目標
 ●「観察・資料活用の能力」の観点に属する目標のうち,5の番号で表されている目標
 これに対して,「社会的思考・判断」や「社会的事象に対する関心・態度」に属する目標は,もとより方向目標の性格を有するものと考えられる。また,「観察・資料活用の能力」に属する目標の中でも,6,7,8の番号で表されている目標のように,単なる技能を超え,思考力や創造力を働かせることが求められているような目標は,やはり方向目標の性格をもっていると言えよう。
 以上の考察から,形成的テストの評価目標として,P.A3の表1の目標群から選定されるのは,1,2,3,4,5の番号で表されているであるということが明らかになる。


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