研究紀要第63号 「教育課程の実施に関する研究」 -015/093page

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でには,全目標の達成が確認された。
 一方,当初からの全目標達成者はもちろん,補充的学習によって比較的早期に全目標達成に至った者も,順次,第6時のうちに個別的なまとめ学習に入るようにしたことは,いうまでもない。

(4)第6時・第7時 個別的なまとめ学習について
 前述のとおり,ここでは,小単元の学習内容をイラストとふき出しで表現する作業を行った。ここでも,初めての作業であったせいか,学習が軌道に乗るのに時間がかかったのは,事実である。
 しかし,第7時のはじめに,第6暗中にある程度の成果を上げた児童の作品を例として提示したところ,大多数の児童が熱心にこの作業に取り組むようになった。次に示すのは,この学習において,自動車関連工場の例として,シート工場のようすをイラスト化したものである。
シート工場のようすをイラスト化したもの

8.むすび
 社会科は,社会生活についての知識を豊富に積み上げれば,それで事足れりとする教科ではない。単なる知識だけではなく,社会事象の意味をとらえ,それに対する認識を深めることに,この教科の重大な使命がある。このように考えたとき,よく言われる「暗記中心型の授業」から脱皮し,児童生徒が主体的に社会事象を追究できる社会科の授業を創造することが,特に大切である。
 とは言え,すべての児童生徒に基礎的な知識・理解や技能をしっかりと身につけさせるという視点を無視してはなるまい。児童生徒が主体的に社会事象を追究するためには,しっかりとした知識や技能を持っていることが前提となる場合も少なくないからである。
 従来,ともすると,この「完全習得学習」の考え方は,「個性的な社会認識」の育成と切り離して論じられる傾向がなかったわけではない。本研究の意図は,これら二つを統一的にとらえて,望ましい小単元展開の在り方を模索するところにあった。そうすることによってこそ,真に「一人一人を育てる」社会科の授業が創造できると考えたからである。
 研究が一段落した今,果たしてこのような当初の意図どおりに進んだかどうか,はなはだ不安である。本研究の中から,わずかでもヒントを得て,より質の高い実践的な研究が行われれば,望外の幸せである。

 おわりに,本研究のために,絶大な御協力をいただいた福島市立笹谷小学校の校長先生はじめ諸先生方,特に御多忙の中で直接授業実践に当たって下さった同校教諭の菊地康則先生に,衷心より感謝の意を表し,むすびとする。

〔参考文献〕
・中野重人「個を生かす社会科の指導と評価」
・梶田叡一「現代教育評価論」
・橋本重治「到達度評価の研究−その方法と技術−」
・橋本重治「教育評価基本用語解説」
・B.S.ブルーム他「敏育評価法ハンドブック」


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