研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -008/106page
II 教材の開発に関する研究
1.プリンカップの蒸し器を用いた「分解反応」の指導
1.はじめに割りばしを用いた木材の乾留では,可燃性ガス,液体留分そして固休としての木炭が得られて,消し難いにおいの付着や試験管の汚れなどに難点はあっても,熱分解の導入的な演示実験としては実に適切なものである。
炭酸水素ナトリウムの熱分解もまた好個な実験例であるが,この熱分解は初学年の教材でもあるので試験管内での分解に加えてもう少し身近な事象に結びつけてみてはどうかと考える。
食パンをはじめとして幾多の食品と粉末ジュースなどの飲料までが炭酸水素ナトリウムの化学変化を基盤としてつくられていることを・器具の製作や実験を通して示し,更に化学では珍らしい試食まで行い得るなら生徒の興味・関心は大いに高まるであろうと思われる。
ここでは・プリンカップとビーカーを組み合わせた蒸し器を用いて蒸しパンつくりを行い,これを分解反応に関連づけてみる。2.素材の活用と指導法
(1)試薬と器具 小麦粉(薄力粉),黒砂糖,炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,石灰水,フェノールフタレン,釘・ピンセット,バーナー,マッチ,三脚,金網,試験管4本,ビーカー3個,メスシリンダー・ピペット・プリンカップ,ガラス棒,ガラス板(透明),マジックペン。
(2)実験
1)炭酸水素ナトリウムの分解
(ア)試験管に炭酸水素ナトリウムを薬さじの小さい方に1杯とり,水を3mgほど加えて振りまぜる。
(イ)ビーカー(200mg)に熱湯を半分ほど入れ・この中に上の試験管をひたしてその変化をみる。
(ウ)他の試験管に石灰水を2mgほどとり,(イ)の試験管の液面上の気体をピペットで吸いとって石灰水中に通じてみる。
(エ)別の試験管に炭酸水素ナトリウムを薬さじの小さい方に1杯とり,水を3mgはど加えて振りまぜた後,フェノールフタレンを2滴加える。
(オ)次に,この試験管を(イ)の熱水にひたしてからビーカーを加熱して色の変化をみる。
(カ)試験管に炭酸ナトリウムを薬さじの小さい方に1杯とり・水を3mβほど加えて振りまぜた後,フェーノールフタレンを2滴加える。
2)蒸パンをつくる
(キ)長さ3cm位の釘をピンセットで保持してバーナーであたため,プリンカップの底に穴を20