研究紀要第66号 「中学校理科の学習指導に関する研究」 -009/106page

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 個ほどあける。次にこのカップが8割以上入るようなビーカー(200mg)を選んで組み合わせて蒸し器とし,カップの底に居かぬ程度に水を入れて加熱沸騰させる。
 (ク)この間に,乾いたど−カー(100mlのに小麦粉10gと炭酸水素ナトリウム0.7gを入れ,ガラス棒でよく混合する。
 (ケ)他のビーカー(50ml)に黒砂糖を5gとり,水を10m畑口えてあたため溶解させる。
 (コ)この砂糖水を(ク)のビーカーに加えて全体が均質になるまでかきまぜる。(こね過ぎてはいけない。)次に,できた生地をガラス棒で追い出すようにしてプリンカップへ移し,平にならしてマジックペンで目印をつける。
 (サ)このカップを沸騰水の入った(キ)のビーカーにのせ,ガラス板でフタをして6〜8分間加熱する。その後,できた蒸しパンをとり出して味わってみる。
実験の図

(3)実験上の留意点
 1) 炭酸水素ナトリウムは水溶液では約65℃で分解するので熱湯につけた試験管からは気泡の発生が観察され,この気体は石灰水を白濁させる。
 2) フェノールフタレンはBTBよりもなじみの少ない指示薬かも知れないが,中性からアルカリ性へかけて無色一淡赤色→赤色と鮮やかに変色するので是非使ってみていただきたい。
 3) 蒸しパンつくりに関係するプリンカップ,ビーカー,ガラス棒,ガラス板はきれいなものを使用する。(ク)で使う乾いたビーカー以外はよく洗わせてから用いればよい。
 4) プリンカップにあける穴を大きくしすぎると流動性を持つ生地が時に流下してしまう。
 5) 得られた蒸しパンの苦味は是非味わって,炭酸水素ナトリウムから炭酸ナトリウムへの変化を実感としてとらえていただきたいが,炭酸水素ナトリウムを0.7g以上加えると苦味がかなり強くなる。黒砂糖は楽しみの添加剤で苦味を緩和し,白砂糖よりもきれいに仕上がって食欲をそそる。
  市販品は塊状なのでナイフで切って重さをはかり,熱湯に溶かして使用する。但し,ここでの分解反応には関知しないことを砂糖水などの事例によって生徒へ周知させておきたい。
 6) 小麦粉に砂糖水を加えて混合する時,こね過ぎるとグルテンの網目構造が生じて粘りが強くなり,膨らみぐあいが悪くなる。生地は2.5〜3倍に膨張する。

3.まとめ

 炭酸水素ナトリウムが日常生活にかかわりの深いものであることを,身近な素材を用いた器具の製作とそれを使った実験で示し,学習の定着化をはかりたい。
 蒸し器の製作はプリンカップとビーカーの組み合わせのほかにもさまざまな容器の組み合わせが考えられ,加熱の方法のくふうからは揚げものへ,炭酸水素ナトリウムの膨化力を追求すればベーキングパウダーや粉末ジュースへ到達するであろう。
 ザラメ糖と炭酸水素ナトリウムを材料としてスプーンまたはしゃくし(お玉)を用いたカルメ焼きも是非行ってみたい実験の1つである。


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