研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -000-01/066page

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ま   え   が   き

 昨今,いろいろな場所で,「教育相談」について語られることが多くなってきた。それは,児童生徒の問題行動に対する根源的指導のための必要論であったり,教師の資質向上のための方法論の一つとしてであったりするようである。

 教育相談とは,生徒指導の二つの側面,すなわちすべての児童生徒を対象として全人的な発達を促す 積極的側面と問題行動をもつ児童生徒への対処という消極的側面の両方にかかわる教育の機能とされて いる。しかしながら,今まで教育相談が語られてきたのは,往々にして問題行動をもちあるいは問題行 動を示しそうな児童生徒の指導という生徒指導の消極的側面についてがほとんどであり,しかもそのこ とに関心をもつ一部の人々の話題であったように思われる。

 教育相談は,児童生徒の問題行動の改善・解決のための重要な手だての一つであるが,もっと積極的にすべての児童生徒の望ましい成長を促進する方法として取り入れられるべきであると考える。これは教育相談的かかわりと名づけてよいと思うが,このことを学習指導や生徒指導に適切に生かしていくことができたら,だれもが望む心地よい教育的雰囲気の中で,充実した教育活動が営まれるに違いないのである。教師の資質向上のための方法論的論議はこのような背景をもとに出現してきているのであろう。

 さて,昨年度から4年計画で進めている「事例を通した教育相談の進め方に関する研究」の第2年次 の研究を終えた。「反社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」の研究に一応の区切りをつけた ことにもなる。今年度は,反社会的行動の事例の提供を教育現場に求め,小学校2校,中学校3校,高 等学校2校の計7校に研究協力校をお願いした。研究の主題や性格上,研究を進める過程において時に 学年・学級経営や生徒指導のあり方の細部にわたって率直な意見の交換が必要であるので,あらかじめ これらのことを申し上げお願いしたのであるが,いずれの学校の校長先生からも直ちにご快諾をいただ いた。また各校の担当者の研究への取り組みは実に積極的で校務繁忙のなか精力的など努力を続けてい ただき所期のねらいを達成することができた。本当に有難いことであった。心から御礼申し上げる。

 そして,事例研究を進めることを通して特に感銘を受けたのは,教師の人間性と指導力のすばらしさ にであった。教育相談は終局的には人間関係による人間形成の過程である。本妃要に示した教育相談事 例において明らかであるように,いずれの研究協力校でも,組織的に実践し成果を積み重ねられたので ある。教育荒廃が叫ばれて久しく,また教育に関する望ましくない出来事が発生するたびに学校が批判 され,教師が非難される時代であるが,教師の本当の姿をこの研究から理解していただければ幸いであ る。

 最後に重ねて研究協力校の諸先生に敬意と感謝の意をささげるとともに,本研究の推進に際しご指導 ご助力を賜った多くの方々に厚く御礼申し上げる。またさらに,本研究に対して忌憚のないご批判ご意 見をお寄せいただくことをお願い申し上げる。

昭和61年3月

福島県教育センター所長  折 笠 常 弘


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