研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -001/066page
「事例を通した教育相談の進め方に関する研究」
反社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助
― 第 2 年 次 ―
1. 解題 その2
これは標題に関する2か年継続研究の第2年次 の研究紀要である。本研究のねらいは反社会的行 動をもつ児童生徒に対するより的確で効果的な教 育相談のあり方を確立することである。
第1年次研究においては,まず最初に児童生徒 の問題行動のとらえ方,反社会的行動の定義,反 社会的行動への心理的な指導援助のあり方など, 反社会的行動に関する当教育センターの基本的な 考え方を示した。次に,反社会的行動が発生する メカニズムと背景を構造的に明らかにするととも に,多年にわたる実践から生み出した教育相談を 進める手順と留意点について詳述した。そして, 当教育センターに来所し,改善・解決が図られた 反社会的行動の教育相談の中から7つの事例を抽 出して紹介した。これは,反社会的行動をもつ児 童生徒の発達段階,性差,環境,問題の特性など に応じた望ましい教育相談の進め方についての主 張と提言であった。
第2年次研究の具体的なねらいは,事例の提供 を教育現場に求め,教育現場と協力しながら反社 会的行動をもつ児童生徒の諸問題や行動の改善・ 解決を果たすことを通して,教育現場で行うより 的確で効果的な教育相談の進め方を追究し確立す ることである。そのために,児童生徒が反社会的 行動に至っていく過程を適正に把握して問題点を 明確にとらえ,反社会的行動を改善・解決する教 育相談の治療面接について具体的に論究すること を試みる。
また,この研究は教育現場における教育観や教 師個々の指導のあり方の見直し,生徒指導・教育 相談の充実深化のための指導資料として貢献する ことも大切なねらいとしている。事例研究ととも に,いくつかの「反社会的行動への教育相談的対 処」について触れるのはこの意図からである。
事例研究は研究協力校を得て行う。研究協力校 は原則として当教育センターの「学校カウンセラ ー講座(昭和60年度から「教育相談講座」及び「 学校カウンセラー養成講座」を改称)の受講者の 所属する学校から選択する。
反社会的行動をもつ児童生徒に対する直接の指 導援助(カウンセリング)には研究協力校の担当 者があたる。当教育センター所員は各研究協力校 の担当者のカウンセリング活動が適切に進むよう 協議し,必要に応じてコンサルテーションを行う とともに,指導資料をもとに紀要原稿を作成する。
事例の取り扱いは、児童生徒の人権を考慮し, 特に慎重を期す。そのため研究協力校名及び担当 者の氏名,児童生徒の氏名や住所などは一切公表 しない。ただし,これによって事例の本質を失う ことがないよう十分配慮する。