研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -045/066page
● 知能検査
教研式知能検査 SS 46。特徴としては,物の形と大きさを直観的に判断する力 数量関係を把握し計算する力,数量的推理力が極端に低い。
以上の資料からでは,盗みという行為の要因を十分に理解できなかった。したがって本人や親との面接や検査,及び本人を指導している教科担任の観察などから新たな資料を収集した。
(2)新たに収集した資料
● 身体・生理面
乳幼児期から現在まで問題とみられることはない。● 性格面
小さい時からやさしく素直で反抗するようなことは少なかった。また,小心であるが軽率な行動や目立ちたがる傾向が見られる。全体として世話好きであるが論理的に物事を考えることが苦手である。● 環境に対する適応の面
家庭や対人関係に何の不満も感じてなく,社会性の未発達さがうかがえる。● 学業面
将来の目安がなく,勉強の大切さにも目を向けたことがない。毎日をただ何となく過している。● 両親の性格と養育態度
父親は物事の善し悪しやけじめなど厳格さを持っているが,養育の多くを母や祖母に任せており厳しくしつけることが少なかった。
母親はやさしく穏やかである反面,叱ることが少なかった。本人を溺愛している。
また,家族は本人の出生に際し女の子を望んでいた。そのため,小さいころよく女の子の服装をきせていた。● 今回の問題行動と関連ある事実
5月中句,本人が通学に使用していた新品の自転車が盗難にあったが,家族も警察署に届けようとせずうやむやにしてしまっていた。5.診断
養育には,主に母親や祖母があたった。厳格さやけじめのあるかかわりに欠けた養育態度であり,ただ溺愛していた。また,家庭生活では,主に祖母や母親が中心的役割を果していた。父親は仕事が多忙という理由で本人にかかわることが少なかったため父親の持つ規範性や厳格さなどは本人の成長に対して影響が少なかった。以上のことから規範性や自己の欲求をコントロールする力が十分に発達せず,論理的思考力にも欠ける面が生じたものと思われる。そのため,社会性にも未熟で環境に対しても何の疑問も抱かず,学業や将来についても考えが浅い。
このような状況のもとで,自分の自転車が盗まれたことやそれに対する家族の適切でない対応の仕方などが関連して今回の問題行動が生じたものと考えられる。
6.指導仮説
<本人に対して>
(1)幼児性の高い罪悪感を持たない行為であるため,今回の行為は法律上また人間として許されないことを論理的に諭す。
(2)自分の性格や将来について深く見つめさせる。<家庭に対して>
(1)家庭は父親中心の生活をする。
(2)父親の本人へのかかわりを多くする。
(3)家族全員で,本人を大人として扱う。以上により,まず自分の行動に慎重さが生まれ,また父親との接触により父親の持つ規範性が身につき,さらに自主性社会性が成長していくものと思われる。そして将来の目標が決まれば,学校生活に充実感を抱くものと考えられる。
7.指導援助の経過
(本人…本人,母親…母,学級担任…学,教育相