研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -052/066page
男子,高校生では女子に多い。これらは警察に補導された人数であるので,実際にはもっと多くの件数があると想像されている。
万引きの行われる場所はスーパーマーケットが第1位にあり,店舗構造が誘因になっていることを示している。
3.要因
(1)素因を形成する親子関係の特後
万引きをする子供の多くは,親子関係を通じて素因が形成されているといわれている。例えば,
● 子供に対するスキンシップやコミュニケーションの不足
● 養育態度が,放任,過干渉,溺愛であることが多い
● 父親の存在感が薄く,権威を持たず,リーダーシップに欠ける,などである。
このような親子関係の中で育った子供には次のような特徴がみられ,それが万引きの素因になると考えられる。
(2)素因としての子供の特赦
● 情緒が不安定で,常に満たされない,認められないといった感情をいだき,自己顕示的な行動をとりやすい。
● 自制心,耐性が低く軽率であるために,欲しい気持ちを抑えられないで,欲求充足的な行動をとりやすい。
● 善悪の判断や,正しい価値感などの社会規範が身についていないか,間違った判断傾向を持つため,規範逸脱傾向のある行動をとりやすい。
また,集団では,規範性の弱さのために罪悪感,が集団心理の中に埋没され,行為に対する正しい判断が失われることが多い。このような特徴を持つ子供たちが,種々の誘因に出会うと万引きという行動に発展する。
(3)誘因としての店舗の構造.商品の配列
資料でもあげたように,現在,スーパーマーケット形式をとる店舗が多くなっているため自由に商品を手にとることができるし,場合によるとそこが子供の社交場であったり,遊び場であったりすることが多い。そして,監視,管理から逃れられやすい。
(4)誘因としての友人関係
● 仲間はずれを極度に恐れる心理
● 友人からの強迫や脅し,など4.対処のしかたと留意点
(1)子供への指導
万引きを知ったら,
● 事実関係を正しく把捉する。
● 誘因,行為への動機を正しく把握する。
● その時の心理状態に配慮する。
● 素因をいろいろな角度から検討するその上で,万引きは窃盗犯といわれるれっきとした犯罪行為であり,品物の価格の大小,状況などにより見逃せるものではないことを理解させるしかし子供だけを責めるのではなく,その背景にある心理に十分配慮する必要がある。
次に,できるだけ親子で相手方に謝罪に行き,ともに解決しようとする姿勢を示すことである。
(2)親への指導
万引きの多くは,親子関係への警鐘であり,何らかのサインであるという立場に立ち,子供を過度に叱ったり,責めたりして解決しようとせず,親として養育に問題はなかったか,親の果たすべき役割を正しくとってきたかなどに目を向けるよう指導する必要がある。
しかし,ここでも教師が親を責めるような関係にならないよう配慮するとともに,親子関係の問題などを,万引きに発展する以前に気づき,指導できなかった教師の力量不足を反省する必要があろう。