研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -051/066page
4.対処のしかた
多動の子供の指導にあたっては,まず最初に身 体的要因を検討する。それが考えられる場合,児 童精神科医の診察を受けさせ,医学と連携して指 導にあたる。その場合,子供や親に軽々しく「M BD」などの言葉を用いないことが大切である。
心理的要因のみによる多動の場合は,環境調整をし,情緒の安定を図ることが指導の基本である。なお,身体的要因による多動の場合でも,情緒の安定を促す環境調整はとても大切なことである。
次は主として小学生の多動に対する対処の要点であるが中学生,高校生の指導の基本でもある。
● 子供をよく観察し,その状態像のもつ意味を正しくとらえる。
● 個人指導の機会を多く持つ。これが多動の子供の最も効果的な指導法である。
● 叱責,罰など心理的な抑圧を加えることなく穏やかに諭す,肩を抱いて着席させるなど,温 かく接する。
● 共遊,協同の機会を多くする。それらのふれあいの中で長所を認め,ほめ,励ますようにす る。
● 学習障害がある場合,多動への対処とともに学習への対応を行う。特に国語,算教などに劣 等感をいだかせないように十分留意する。また基本的生活習慣について不十分であると思われる点があれば,それらを確実に身につけさせる ようにする。
● 多動の原因と対処のしかたについて,全教師の理解と協力を得るよう配慮して指導を進める。
● 家庭に対しても,多動な子供への接しかたについて,理解と協力が得られるよう具体的に働 きかける。
なお,現在,多動な行動を示してはいないが,学校生活や集団に不適応状態にあり,交友関係の調整がうまくできない中学生や高校生がいる場合には,本人の幼少時,小学生時代にさかのぼり,「多動」の有無について検討してみることは,問題行動の正しい理解と適切な指導を進める上で大切なことである。
B.万引き
1.問題のとらえ方
万引きは,反社会的行動の中でも,特に小・中・高校生の占める割合の高い問題行動であり,近年初発型非行といういい方で表現されているように,これが入口となってさらに深刻な反社会的行動へと発展していくことも多くみられている。このようなことから万引きを単純で,よくある問題行動と考えず,できるだけ早い時期の組織的,構造的な指導への取り組みが必要である。
2.現状
万引きの現状を昭和59年度「少年の補導及び保 護の概況」(福島県警察本部)からみると,刑法 犯少年4,681人のうち,窃盗犯少年は3,912人( 83.6%),そのうち万引き少年は1,751人(44.8 %)であり,それに占める小・中・高校生の割合 は1,612人で92.1%にのぼっている。
以上のことから,万引きは中学生に最も多く,次に高校生,小学生の順となり,小・中学生で