研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -001/058page
1 研究の趣旨
(1) 本研究の意義
当教育センターでは,昭和58年より4年計画で「学習指導と評価に関する研究」に取り組んできており,今年度はその最終年次に当たる。
近年,学校教育における評価の重要性がとみに強調され,望ましい評価の在り方についての指針を求める声が大きい。本研究はこれに答えるべく,第2年次より,特に学力の情意的領域に属する「関心・態度」について,その評価の在り方を追究したものである。
研究にあたっては,次のような評価観に立脚して理論と実践の両面から推進してきた。
第1は,「指導と評価の一体性」の重視である。学習指導における評価には,ある学習に入る前に児童生徒の実態を把握し,レディネスを整えるための診断的評価,指導過程においてそれぞれの下位目標が達成されているか否かを評価するための形成的評価,そしてある1つのまとまった学習指導の後で,その上位目標を達成しているか否かを評価する総括的評価という3つの評価の流れが考えられる。この研究では,毎時間の授業の充実を図るため,指導過程における評価を重視し,その評価の結果を次の指導にフィードバックしていく形成的評価を中心とした評価の在り方を追究しようとするのである。
第2は,情意領域の指導と評価の重視である。一般に学力は認知・技能・情意の3領域にまたがるものであるとされている。その中の情意的学力は認知的・技能的学力獲得の原動力となり,それらの保持を一層確実にするものである。したがって,情意領域の学力は認知・技能面の学力と同様に大切なものであるにもかかわらず,これを的確に評価することは非常に困難な現状にある。そこで情意領域の学力を評価するために,「関心・態度」の適正な評価法の開発が必要なのである。
以上のような考え方に基づき,教育現場の指導と評価の改善にいくぶんなりとも寄与しようとして実践研究を推進してきたのである。
(2) 「関心・態度」を取り上げた理由
初年度「学習指導と評価」という主題のもとに研究を開始したこの研究が,第2年次より,「関心・態度」の評価に焦点を絞って推進されることになったのは,次のような理由からである。
第1には,今日の学習指導において,「関心・態度」のような情意面の育成がますます重要になってきていることがあげられる。それは学校教育において「人間性豊かな児童生徒」や「自己教育力のある児童生徒」の育成が,いわば今日的課題として求められているからである。これは,従前ややもすれば散見されたような,知識偏重の教育を是正し,認知・技能・情意3領域をバランスよく育成するような指導とその評価によって初めて可能になることだからである。
第2には,情意領域の評価の実態からである。指導要録では,全教科で「関心・態度」の達成度評価を求めているにもかかわらず,研究初年度の「学習指導と評価に関する実態調査」によると,「関心・態度」の評価には多くの教師が戸惑いを感じ,自信がないと答えていることである。これを受けて,そのための適正な評価法を開発することは有意義なことである。
第3には,「関心・態度」の高まりは学習意欲を喚起し,積極的な学習行動を啓発するという考え方からである。学習意欲を喚起するためには,外発的動機づけも有効ではあるが,児童生徒が自ら主体的に学習に取り組み,積極的な学習を持続させるためには,むしろ内発的動機づけが不可欠なものである。児童生徒が,自ら興味や関心をもって,「面白いから,楽しいから勉強しよう」というように,彼らに自発的な学習を喚起することが大切なのである。内発的動機づけは,児童生徒の「関心・態度」を高揚させ,本人自らの意志によって学習を継続させようとする大きな原動力となるものである。したがって,普段の学習指導にあっては,意図的・計画的に「関心・態度」の育成を図り,その上でこの「関心・態度」を評価することが非常に大切になってくると考えるのである。