研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -018/058page
6 検証授業の分析と考察
本研究では,文学的文章教材における「関心・態度」の評価の在り方に焦点をあてており,児童が,「進んで,意欲的に,真剣に」学習に取り組もうとするかどうかという情意的領域を中心に評価した。
評価の実際にあたって,単元の中に検証授業を設定して単位時間内の評価を試みた。
検証授業は3回実施した。第1回(題材「石うすの歌」7月実施)の反省点として,[1]評価基準設定の在り方[2]情意面を高める「手だて」の必要性の2点がでてきた。プロジェクト研究の国語班ではこの反省を踏まえて,第2回,第3回(題材「やまなし」11月実施)の検証授業を実施した。この中では,次の3点が重点的に取り上げられている。
[1] (+),( 0 ),(−)3段階の評価基準を設定する。 [2] 情意面を高めるための有効な「手だて」を講じる。 [3] 「手だて」の有効性を確かめるために,単元における児童の情意面の変容を見る。
「分析と考察」においては,上掲の[1]〜[3]を中心に,第2回,第3回の検証授業について記述する。検証授業における評価場面については,観察法と自己評価法を中心に6回設定した。ここではそのうちの4回について記述する。
この検証のために,抽出児童として6名選び,当センター所員16名が分担し,詳細に観察した。抽出児童のタイプについては次の通りである。
<表3> 抽出児童のタイプ
認知・技能 高 中 低 意欲 高 A子 B男 C男 低 D男 E子 F子 ここでは,6名の抽出児童について,指導者の評価,観察者の評価・観察記録,児童の自己評価をあわせて記述する。具体的には4つの評価目標と,単元における情意面の変容について,[1]評価の意義や重要性[2]評価の実際と結果[3]考察という手順で述べることにする。
なお,以後の記述においては,検証授業を行った者を「指導者」,抽出児童を「児童」,観察だけを担当した者を「観察者」と表記する。
(1) 単位時間における検証授業
―― 検証授業II ――
評価目標 1
作品の題名に関心を持ち,学習に取り組もうとしている。
評価方法:観察法(マイナス・チェック)
評価基準評価場面:めあてを持つ段階
作品の題名に関心を示さず,学習意欲が見られない。
○ 先生の話や友だちの発表を聞こうとしない。 ○ ハンド・サインをまったくしない。 ○ 話し合いに参加しようとする様子がまったく見られない。 ○ 作品に関係のない発言をしている。 ○ 配られた実物のやまなしを,作品との関係でとらえようとせず,他の目的で楽しんでいる。
作者宮沢賢治について,身近な童話作者であることにふれた後,題名「やまなし」に興味を持たせる場面。 [1] 評価の位置づけ
文学的文章教材において,作品の題名の持つ意味はきわめて大きい。特に「やまなし」のように,童話ではあるが,想像豊かに描かれている作品の場合はことさら大切になる。作品に入る動機づけは勿論のこと,この作品の主題を考えるとき大切な意味をもってくるからである。