研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -019/058page

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また「やまなし」は,6年生にとって難解な教材といわれている。導入段階での興味・関心の喚起のしかたや授業展開の過程を誤ると,最後まで内容の把握ができない作品である。そこで,導入段階での動機づけの有効性を考えて,この場面での「手だて」とそれに対する評価目標を設定した。

[2]  評価の実際と結果

評価場面での発問と「手だて」は次の通りである。

ア 題名の「やまなし」とはどんなものだと思いますか。
 ・どのくらいの大きさで,どんな色をしていますか。
イ やまなしを実際に見たことがありますか。
ウ 実物のやまなしを児童に配付する。

指導者は,座席表に達成不十分(−)と思われる児童をチェックした。その結果,この評価場面においては該当者がなかった。観察者による児童の評価は次の通りである。

<表4>評価目標1における観察者(10名)の評価
抽出児
評価基準
A子 B男 C男 D男 E子 F子
十分達成(+) 1 2 0 2 0 0 5
おおむね達成( 0 ) 0 0 2 0 2 1 5
達成不十分(−) 0 0 0 0 0 0 0

実際の授業は次のように展開された。指導者のアの発問に対してほとんどの児童が「山にある梨のこと」という反応をし,中に一人が「やまがないこと」と答えた。イの発問には「見たことがある」と答えた児童はなかった。そこで指導者が,「今日はみんなにプレゼントをします。」と言いながら,更紙の小袋を配った。中にはやまなしの実物が3個ずつ入っているが見えない。児童は「何だろう。」,「かたいぞ。」,「やまなしかな。」などと口々に言いながら小袋の上から想像している。「あけてもいいですよ。」といわれ,取り出してみて半信半疑の顔をしている。「これがほんもののやまなしですよ。」との言に,即座に「先生,食べられるんですか。」と声をあげる。

この問の動きを観察者はB男について次のように記録している。

B男についての観察者の記録

指導者は,達成不十分(−)の評価をしなかったので,特にフィードバックしないで,次の段階に進んだ。

[3]  考察

・指導者,観察者ともに達成不十分(−)としてチェックしたケースはなかった。十分達成(+)とおおむね達成( 0 )とが半々であり,この場面では認知的領域との相関性があらわれる結果となった。指導者と観察者の観察結果にほぼずれがなく,児童の具体的な動きが伴う場面での情意面を評価する方法として,観察法は有効であるといえる。

・評価場面ア,イは導入の段階で同様のケースが多々でてくる。指導者の発問のしかた,児童の反応の取り上げ方で児童の興味・関心が高められていく大切な場面である。

今回は,ア,イを受けて,ウの場面が情意面を高めるのに有効であったとの観察結果がでている。(観察者中7名が指摘)B男についての観察者の記録に見られるように,「やまなしの実物が渡されてからは興味を持って急に活動を始めた。」,「指示の前に黙読を始めた。」と,情意面における興味・関心の高まりが,やまなしの実物提示とい


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