研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -032/058page
授業者の感想
「関心・態度」の評価に関する検証授業に取り組んで 福島市立鎌田小学校教諭 大谷 輝子
研究協力校の一員として授業を行うにあたって不安がたくさんあった。国語科の研究が浅いことや私自身が,関心の薄い教科だからである。
国語科の評価観点は,言語に関する知識・理解,文章を書くことや話すこと,読むことや聞くこと,文字を正しく書くこと及び「関心・態度」の五つからなっている。「関心・態度」以外のものについては,ある程度客観的な評価を得るように日ごろの授業での評価,単元毎の各種テストにおける観点別評価などで行うように心がけてきた。しかし,「関心・態度」についての評価は,評価方法について確立された技法を持たないまま曖昧に行ってきた。それに,認知的側面の評価に重点をおき,「関心・態度」の評価は,主観的な観察による評価が大部分を占め,ともすると,評価のための評価で終わりがちだった。この意味で,この検証授業を通して今までの評価方法を反省し,さらに国語科の目標である「国語に対する関心,国語を尊重する態度」の育成のためには,認知的側面とともに「関心・態度」を高めていく授業のあり方が重要であることを改めて考えさせられた。以下,検証授業を行って感じたことを述べてみたいと思う。
まず第一に,児童一人ひとりを大切にし,内面までをよく知ることである。担任が最もよく児童を理解していなければならないにもかかわらず,日ごろ児童をよく知っていると思い込みがちなため,児童一人ひとりの本当の視線や心の動きに気づかない点が多かった。どうしても,認知的側面から児童を見つめてしまうことが往々にしてあった。人一倍努力しているのに「言いたいことが言えない」,「こう表現したいが書けない」という児童の内面を多少なりでも知り,賞賛したり,フィードバックしたり,その他多方面から一人ひとりの児童を理解した上で,その子に合った指導の工夫を図る必要があると感じた。
次に,教材研究の大切さを再認識した。「やまなし」の単元は,今まで何回も指導してきているが,その度に文学的にすぐれた作品が絶えずそうであるように「難しい」と感じる教材であった。この単元に入る前「やまなし」のところを読んでおくように話したら,やはり児童からも「難しい」という声が返ってきた。ところが,やまなしの実物提示やかわせみの絵の提示,ラムネの瓶の提示などにより,やまなしがより身近なもの,かつ視覚を通してより抽象から具象へととらえ方が切迫したものとなってきた。また,今までの授業では,書くことに重点をおいて指導することが多かったが,今回の授業では,読みとったことや想像したことを形にこだわらず絵で表現させたために,どの児童も意欲的に活動することができた。それに「関心・態度」は一単元だけでなく,いくつかの単元が積み重なって形成されるように思った。長い時間をかけて児童のものにしていくためにも一時間一時間の意欲的な取り組みを育てていく指導過程の構成が大切であることも感じた。このようなことから,児童の学習が意欲的に進められるためには,地道な教材研究と創意工夫によるところが大きい,というごくあたり前のことを再認識させられたとともに,観点別達成目標,評価基準,評価方法等,多方面にわたり,その作成方法を知ることができたことは,大きな収穫となった。
さらに,教師の反省と自覚を土台とした検証授業は,児童の豊かな感性を刺激し,やまなしの初期形を市立図書館に行ってコピーしてきたり,この授業が終わってからも,分からないことがあると図書館に足をのばす児童が多くなるほど波及的効果を生みだした。児童から学ぶところも多い授業であったが,これからも一人ひとりが意欲的に取り組める指導法の工夫を図り,「関心・態度」の指導と評価にあたっていきたい。