研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -031/058page

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7 まとめ

この研究を通して次のことが明らかにされた。

(1) 評価基準について

・基準を3段階  十分達成(+),おおむね達成( 0 ),達成不十分(−)に設定したことが効果的であった。ただし,具体的な基準の設定については,さらに綿密な検討が必要である。

・6年生の達成目標である「効果的な〜」,「適切な〜」という表現を評価基準設定の中にどのように組みこむかについては今後研究を要する。

(2) 評価方法について

・観察法(マイナス・チェック)

基準にしたがい,表情,言動を観察することによって,「進んで,意欲的に」活動しよう とする児童の情意を,おおむね正しく評価することが可能である。
即時のフィードバックが可能である。
この方法では,児童の言動に表れない情意まではとらえることができない。

・自己評価法(多肢選択法,記述法)

評価基準の設定の工夫により,観察法ではとらえにくい情意をとらえることが可能である。
多肢選択法は,その項目を単位時間全体を対象にするものと,単位時間内の評価場面を対 象にするものとを組み合わせて設定することで,より正確に評価することができる。
記述法は,その記録をつみ重ねることによって,情意面の変容を見ることができる。
評価結果に基づくフィードバックを時間内に行うのは難しい。

・観察法と自己評価法を組み合わせて評価することによって,より客観的な情意面の評価が可能になる。

(3) 情意面を高める「手だて」の必要性

・単位時間における「手だて」
単位時間においては,実物の提示,OHPの使用,班別学習などのように,直接児童の情意面を喚起するものが望ましい。

・単元における「手だて」
単元での情意面の育成をめざすものであり,指導過程に位置づけることが大切である。今回でいえば,「やまなし」の学習において「情景を説明できる絵を描く」学習活動を設定したことがこれにあたる。

・学級や学校の活動の特徴を生かした「手だて」
学級や学校の活動として取り組んでいるものを情意面を育てる「手だて」として,児童の意欲を高めることは有効である。今回,図画工作科の研究指定を受けていた児童の絵に対する関心の高まりを,「やまなし」の学習に取り入れたのがこれにあたる。

国語科においては,教科の性格上このようなケースが多く考えられる。書写,読書感想文,弁論発表など,いずれも「手だて」として生かすことができるものと考えられる。

8 おわりに

「関心・態度」の評価についての継続研究の一環として,今年度は,小学校国語科について,理論研究とそれに基づく実践研究を行ってきた。

実践研究においては,単位時間における「関心・態度」の評価を主に検証し,発展的に単元を通して見られる児童の情意面の変容をとらえる試みをした。

この実践を通して,強く感じたことは「手だて」の重要さということである。児童の情意面を高めることは"教師がいかに有効な「手だて」を講じるか"に尽きているといえよう。

今回の実践研究にあたっては,当センターの所員が検証授業の観察者として参加し実施しているが,それぞれの学校においては,児童の実態に応じて取り入れられることを期待したい。
この研究が,実際に「関心・態度」の評価を実施しておられる先生方にとって,少しでも参考になれば幸いである。


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