研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -035/058page
学校体育においては,運動の楽しさを味わわせることによって,運動への興味や関心をより一層高めることをねらっている。しかし,楽しさや興味・関心などの生徒の情意面の指導や評価は,非常に難しい。そこで本研究では,理論研究に基づき,検証授業を通して,単位時間の授業における「運動・保健に対する関心・態度」の評価の在り方を取り上げ,研究を進めた。
その結果,次の事柄が明らかになった。
1 評価基準は,学習課題への取り組みの状態を把握するうえから,十分達成(+),おおむね達成( 0 ),達成不十分(−)の3段階に設定することが効果的である。 2 「関心・態度」の評価方法については,単一の評価法では客観性や妥当性に限界があるので,自己評価法や相互評価法など,複数の評価法を組み合わせる必要がある。 3 「関心・態度」を高めるためには,生徒一人一人の能力に応じた課題をもたせて学習させることが大切である。さらに,評価目標に即して,認知面や技能面の手だてを準備し,適切にフィードバックさせる必要がある。 1 保健体育科における研究のねらい
保健体育科の目標は,体育学習によって運動の価値を認識し,健康の維持・増進のために日常生活はもちろん,生涯にわたって生活内容の一部として習慣的に運動を実践する態度を育てるところにある。
しかしながら,これまでの体育の授業は認知面や技能面の指導に重点が置かれ,授業の形態は教師中心の一斉・画一型が多く,生徒個々の能力や適性,情意面などへの配慮はあまりみられなかったことは否めない。それは,これまでの体育科教育においては,運動に関する技術体系やその理論など,認知面や技能面に関する研究は各方面でかなり進められてきたものの,情意面にかかわる指導や評価の在り方についての研究が遅れていたことに起因するものと考えられる。
そのため,多くの生徒は運動に対する興味や関心をもっていても,学年が進むにつれて体育の授業に対する意欲が低下する傾向がみられ,学校を卒業して授業による運動実践の義務がなくなると,運動から遠ざかってしまうのが一般的であった。
このような反省に立って考えると,体育の授業において,教師は,生徒の個々の能力や適性に配慮しながら運動に対する興味や関心を高めさせ,生徒が主体的に運動を実践していくような態度を育てていく必要がある。
情意面の学力である「関心・態度」は,体育学習において,運動に関する知識や技能を獲得するための原動力になるとともに,それらをさらに維持・向上させるための力となるものである。したがって,体育学習において,運動の特性に触れる楽しさをより一層味わわせたり,運動に関する知識や技能を確実に獲得させるためには,教師は,生徒が現在取り組もうとしている運動に対する「関心・態度」の状態をできるだけ正確に評価し,その評価結果に基づいて適切な手だてを講じていかなければならない。
このように考えてくると,保健体育科においては,運動に対する「関心・態度」の指導と評価が,最も重要な課題となってくるのである。
そこで本研究では,中学校保健体育科の体育分野における「運動・保健に対する関心・態度」のうち運動に対する「関心・態度」についてその指導と評価の在り方を理論と実践の両面から追究することにした。
2 研究の進め方
この研究では,次の手順で「関心・態度」の評価の在り方を考察する。