研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -000-01/071page

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まえがき

 近年、本県の教育関係機関、諸団体および学校で、生徒指導に関する研究会や協議会が熱心に行われています。とりわけ、今年ほど教育相談に関する研修会が盛んに開催されたことは、かつてなかったように思います。各学校や関係機関のこうした努力が実り、児童生徒のさまざまな問題行動は漸次減少の傾向を示しております。しかし、それでもなお各学校では児童生徒の行動についての多くの問題をかかえております。文部省の調査によれば、昭和60年度は、全国的に暴力は減っているが、いじめの相談は前年度の3倍、不登校が中学校ではこれまでの最高であったと報じています。当教育相談部でも、不登校や集団不適応などの問題についての相談がかなりの件数にのぼっております。

 これらのことから、各学校、関係機関では、児童生徒の問題行動の予防と対策のあり方が切実な問題となっております。

 こうした実情にかんがみ、当教育相談部では、「事例を通した教育相談の進め方に関する研究」を主題とし、昭和59〜60年度は、「反社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」の研究に取り組み、一応のまとめをいたしました。昭和61〜62年度は、その関連の研究として、「非社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」のあり方を追究することにいたしました。

 昭和61年度は、県内小・中・高校より、非社会的行動をもつ児童生徒に関する事例の提供をいただき、当該学校と当教育相談部、関係機関とが連携して指導援助についての実践的研究を進めてまいりました。すなわち、事例の一つ一つについて、非社会的行動が発生するメカニズムや背景を明らかにし、指導援助の仮説を立てて問題行動の改善に努めてまいりました。その結果に基づいて、どのような指導援助が非社会的行動の改善にとって効果的であるのかを分析し、検討いたしました。そして、それら非社会的行動の改善の効果的な諸要件を帰納的に集約し、ここに「非社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」として本紀要の発刊に至ったものであります。各学校、各位におかれましては、既刊の「反社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」と併せお読みいただき、教育相談の充実のために活用願いますと共に、本研究に対し、率直なご批正とご指導を賜りますようお願い申し上げます。

 おわりに、本事例研究の特殊性から、校名、氏名は割愛させていただきますが、本研究の推進に当たり、ご多忙の中、多大のご尽力を賜りました研究協力校および研究協力員ならびに関係諸機関の方々に心から謝意と敬意を表します。

     昭和62年3月

福島県教育センター所長    折 笠 常 弘


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