研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -004/071page

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(3)非社会的行動の実態

 一般に、産業や経済が高度に成長し、情報化の進んだ社会では、心理的な原因などによる心身の機能的な障害が多くなり、社会環境に適応できない人が増加し、それに伴って当然、問題行動も増加する。

 特に、発達期にある児童生徒は、心身の調和が不均衡になりやすいため、上記のことが一般の成人よりもあてはまりやすい傾向にあると思われる。従って、教育の現場において非社会的行動に適切な対応をしていくためには、おおよその実態をとらえておく必要がある。そのため、いくつかの調査結果の一部を要約して次に掲げておく。

○ 当教育センターへの来所相談の状況

 昭和60年度の来所相談の件数は、338件である。その内容を大別すると、1・非社会的行動214件(63%)、ただし214件中142件(42%)は不登校、2・反社会的行動44件(13%)、3・その他80件(24%)となっており、相談件数の中に占める非社会的行動の割合が圧倒的に高いことがわかる。

○ 昭和60年度福島県公衆衛生事業推進研究事業

 「福島県における地域精神衛生二ーズの把握に関する研究」―第6報―福島医大神経精神科における18歳以下の小児・思春期外来患者統計
 対象は、昭和51年1月1日より同60年12月31日までに外来を受診した1,560名である。疾患分類は、器質性脳障害群、いわゆる精神病群、神経症発症群、その他である。非社会的行動にかかわりの深いのは神経症的発症群で、神経症、行動異常、登校拒否(不登校、以下同じ)、心身症等である。なお、行動異常には習癖異常、食行動異常などが含まれ、心身症には遺尿、チックなどが含まれている。この10年間に受診した患者を疾患別にみると、心身症194名、神経症148名、これに行動異常67名と登校拒否の113名を含めた神経症的発症群は522名で全体の33%を占め、器質性脳障害群の46%に次いで多い。
 また、神経症的発症群の年次別推移では、行動異常と登校拒否が最近数年急増している。このようにこの統計からも児童生徒の非社会的行動の増加傾向がうかがわれる。

疾患別年次別患者数
年度 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60
器質性脳障害群 精神発達遅滞 9 13 33 22 24 20 33 24 17 20 215 46
てんかん 30 27 32 28 29 23 22 24 20 18 253
MBD 10 8 9 8 10 3 10 12 15 6 91
言語発達遅滞 1 0 5 2 3 2 2 7 9 11 42
その他の器質障害 14 10 17 21 11 9 4 11 12 8 117
いわゆる精神病群 自閉症 12 14 18 8 11 01 11 11 24 7 130 13
精神病 8 8 7 10 7 4 6 10 7 6 73
神経症的発祥群 神経症 13 13 12 19 8 11 8 22 25 17 148 33
行動異常 1 4 2 4 4 5 5 11 16 15 67
登校拒否 8 5 6 5 5 8 19 12 20 25 113
心身症 19 17 24 33 18 21 14 10 18 20 194
その他 13 11 17 9 7 10 10 11 12 17 117 8
138 130 182 169 137 130 144 165 195 170 1,560 100
(資料出所)
 昭和60年度福島県公衆衛生事業研究推進事業「福島県における地域精神衛生ニーズの把握に関する研究」―第6報―福島医大神経精神科における18歳以下の小児・思春期外来患者統計

○ 福島県警察本部発行の「昭和60年における少年の補導及び保護の概況」

 昭和60年中、県内で補導された少年(交通非行少年を除く)の総数は27,719人で前年より3,812人(15.9%)増加している。この増加傾向は数年間続いている。このうち非社会的行動とかかわりのあるのは、シンナーや接着剤を乱用した毒劇物法違反少年523人で、前年より23人(4.6%)増加し、特別法犯少年全体の85.7%を占め、特徴的傾向として指摘されている。また特徴的非行形態としては、シンナーが最も多く、次いで接着剤があげられている。学職別では、学生・生徒が231人(30.8%)で中・高校生がほぼ半分ずつである。

 以上の実態は、各機関がその特性に応じ調査、集計したものであるから同一尺度で比べることはできないとしても、児童生徒の非社会的行動のおおよその傾向はとらえることができる。


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