研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -062/071page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 4.非社会的行動の背景と発生のメカニズム

 非社会的行動の背景と発生のメカニズムを理解することは、問題の改善や解決をはかる教育相談を効果的に進める上の前提となる。そこで前記の事例と後述の文献を基に非社会的行動の背景と発生のメカニズムを考えてみたい。

(1) 事例の分析

 <背景について(特徴的に見られること)>

 身体・生活面においては、多くの事例に何らかの身体症状がある。
 性格・生き方については、積極的に自己主張しない性格傾向である。
 友人関係においては、多くは交友関係が狭い。
 親の養育態度では、拒否、過保護、過干渉など人間関係を疎外するような点がある。なお、参考資料として事例分析の資料を次頁に掲げた。

 <発生のメカニズムについて>

 幼少期からの養育で非社会的行動に結びつく性格傾向が形成されている。また、常に人間関係に不満足感を抱いていることが共通に見られる。このような素因があるところに誘因が作用して問題の行動が発生している。

(2)非社会的行動の背景

 事例からも見られるように、非社会的行動は大月三郎のいう「精神現象は4つの次元(生物的、心理的、社会的、実存的)が重層した総合体」の一形態と見なすことができる。すなわち、非社会的行動を理解する場合でもその背景として、この4つの次元が上げられる。そこで、次に4つの次元を基に非社会的行動に結びつく要因を具体的に述べる。

 <本人自身の問題>

● 知能・学業
 知能と学業のアンバランス、学業不振など。

● 身体・生理
 心理的動揺を身体面に表現しやすい体質、身体面の脆弱、身体・生理面についての劣等感や不満足感、不快感、現在示している身体症状の過去における体験など。

● 性格・生き方
 神経質、自己中心的、引込思案、柔軟性のなさ、優柔不断、忍耐性の欠如、過度な協調性、信念のなさ、将来への希望の希薄さなど。

 <環境の問題>

● 友人関係
 孤立、狭い友人関係、いじめられなど。

● 家庭・社会
 望ましくない養育態度(拒否、過干渉、過保護、溺愛、一貫性のなさ、両親の不一致など)、同胞間の嫉妬心や過度の競争心、親子間の不安定な人間関係、ストレスのある社会環境など。

● 学   校
 教師と児童生徒との信頼関係のなさ、不適切な教師の対応、児童生徒理解の不足、非社会的行動についての共通理解の不足など。

(3)発生のメカニズム

 非社会的行動は素因に誘因が作用して発生するが、誘因が特定できない場合も多く、児童生徒自身にも意識されないことがある。また、素因と誘因を明確に区別できない場合もある。下は、素因、誘因をふまえて発生のメカニズムを図式化したものである。

発生のメカニズム


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。