研究紀要第71号 「学校の経営過程における現職研修のあり方に関する研究 第1年次」 -001/126page

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I 研 究 の 趣 旨

 臨時教育審議会答申の“現職研修の充実”の項目の中での「教員の現職研修は,各学校の日常の教育実践と結びついて行われる校内研修を基盤として……」という提言や,OECDの教育革新センター(CERl)などを中心とした「スクールフォーカスト研修のあり方」発の提唱と相まって近年,教育現場においても「校内研修の質的充実と活性化」が注目され,強調されてきている。

 その理由は,教員としての資質の向上と職能の充実強化のためだけでなく,現代の児童生徒に即応した教育には,「教員の現職研修の充実」が必須の条件と考えられるからである。また,従来からも校内研修については各校とも努力してきているが,それは「研修は教師自身の自己啓発に支えられた主体的な活動でなければ,目的は十分に達成できないのではないか」という反省からである。

 さらに,経営的発想のP(計画)−D(実施)−S(評価)のマネージメントサイクルに基づき校内研修を考えた場合,各学校の教育課題解決過程において,全教職員が協働であたり,力を結集してこそ効果があがり,相互に教え,教えられる関係を通して自己啓発は図られ,学校全体の活性化も図ることができると考えられるからである。

 本研究では,こうした問題点に着目し,昭和61年度に訪問による予備調査を実施した。その結果,訪問校ではそれぞれ研究主題を掲げ,校内研修に努力はしていたが,特に次のような問題点があげられていた。○ 校内研修に充実感や達成感が伴わないことが多い。○ 研修意欲に個人差があり深まりにも大きな差がみられる。○ 研修記録の累積や評価が不十分で,生きて働く研修にならない。○ 先輩から後輩に研修のしかたを教え,伸ばすといった指導が少なくなっている。○ 授業研究会での発言が少なく発言者が限られている。○ 研修に具体性を欠き,前回の研修結果などが日々の指導にあまり役に立たないといった現状である……等。そして,これらの問題点に共通するものは「自己啓発に支えられた校内研修の不十分さ」であり,このことが校内研修改善充実の大きな課題であることが確認された。

 そこで研究にあたり,自己啓発に支えられた校内研修の姿を次のようにおさえてみた。
(1)教師一人一人が目的意識を共有し合い,意欲的に活動し,研修内容が日々の指導に役立つ研修であること。
(2)個人的にも課題意識が強く,研修そのことに満足感・充実感が持てる研修であること。
(3)全教職員が共に学ぶ姿勢にあり,信頼関係が成立し,常に創意工夫がみられる研修であること。
(4)絶えずリーダーによって刺激され,新しい情報が迅速に取り入れられ,全員がそれを共有している状態が維持される研修であること。
(5)教職員間の協働意識に支えられ,活気に満あ相互啓発がなされる研修であること。
(6)いつも全員で計画一実施一評価がなされ,教師も児童生徒も共に向上していることがわかる研修であること…等。このような校内研修の姿を各学校の経営過程で実現することを期待するわけである。

 そこで本研究でほ,県下各校の校内研修についての現状の把握に努めるとともに,意識態勢上・組織体制上・企画運営上の諸問題をみつめ,研究協力校の実践研究を通して自己啓発的な校内研修の進め方について追究し,資料を提供して,各校における校内研修の一助にしたいと考えている。

※ OECDの教育研究開発センター(CERI)
 Organization for Economic Cooperation and Deveropment  (経済開発協力機構)
 Center for Educational Resarch and Improvement (教育研究開発センター)
※スクールフォーカスト研修 (個々の学校の実態や特性・要求・課題を満たし,授業の水準を高めるのに必要な研修計画を整え,学校として推進するためのあらゆる方策を考え全員で推進する研修
    学習情報研究62年7月号(牧昌見)


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