研究紀要第72号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第1年次」 -070/126page
については,知識や技能とするのがかなり多く見られる。しかし,「見方や考え方」が他の項目に比してかなり低い。このことは,知識や技能を重視する現在の教育の状況を反映しているものと考えられる。個別化・個性化のために「見方や考え方」は欠かせないものであり,そこに目を向けた指導の在り方を今後追究していく必要があろう。
【教育システム】
ティーム・ティーチングによる指導は,ほとんど行われていないが,その必要性は強く感じている。このことは,ティーム・ティーチングによる指導が,効果的な指導法であると考える教師が多いことを意味しているものと思われる。
多目的スペースについては,今回の調査の対象からは設置しているところが極めて少なかった。その設置については必要性がうかがえ,個別化・個性化を図るために有効な施設であると思われるので,今後その効果的な利用法を考えていくべきであろう。
【基礎・基本と個性のかかわりについての意見】
基礎・基本の定着と個性の伸長は,段階的に考えるべきで相反する傾向にあるという考えと,両者は相互に高められていくものであり,相反するものでないとする考え方が見られる。ところで,個性は,生まれながらにして有しているものであり,幼児のときから生涯にわたって育てていくことが肝要である。したがって,学習指導において,児童生徒の発達にそって個性を生かし,伸ばす指導の在り方を考えることは意義あることであろう。(2) 調査領域相互の関連
基礎的・基本的な内容の定着を図るためには,一斉指導も必要であるが,個別指導等の方法はかなり有効なものと考えられる。個別指導等は,同時に個人差に応じた指導に必要欠くべからざるものである。
ところで,個人差に応じた指導を展開するためには,まず,進度の違いに応じて進める学習や興味や関心に基づいて「学習コース」,「学習方法」を選択して進める学習など,学習形態を工夫することが大切になる。ティーム・ティーチングによる指導や多目的スペースを利用した指導などの指導法を効果的に取り入れることが必要である。的に取り入れることが必要である。
更に,指導の在り方については,知識面に重きがおかれ「見方や考え方」などの面に対する意識が低い傾向がうかがわれる。これは,一人一人の適性にまで目が向けられていない現在の指導状況を示しているものと思われる。今後は,興味・関心や適性を生かしながら,個性にかかわる「見方や考え方」などに注目し育てていくことが,児童生徒一人一人の個性を生かし,伸ばすために極めて重要であると考えられる。2. 今後の課題
本調査の結果に基づいて実態を述べてきたが,そこから浮き彫りにされた今後取り組むべき課題を,次に述べることにする。
○ 基礎的・基本的な内容をどのようにとらえ,いかに定着させるかを追究する。
・ 基礎的・基本的な内容の把握
・ 基礎的・基本的な内容を定着させる指導の在り方
○ 児童生徒の持つ「よさ」をどのようにして把握し,いかにそれを生かし,伸ばすかを追究する。
・ 児童生徒の「よさ」の把握
・ 児童生徒の「よさ」を生かし,伸ばす学習指導の在り方
参考文献
- 個別化教育入門:加藤幸次(教育開発研究所)
- 個人差に応じる学習指導事例集(文部省)
- 個別化教育の進め方:全国教育研究所連盟・編(小学館)
- 研究紀要第40集 個性を生かす指導へのアブローチ:鳥取県教育研修センター
- 昭和59年度研究紀要:香川県教育センター
- 個人差に応じた指導の実践的課題:児島 邦宏(中等教育資料 No.511)