研究紀要第72号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第1年次」 -069/126page
IV 研究のまとめ
1.まとめ
本年度は,研究主題に関する理論を構築し,研究仮設を設定するために,教師対象の実態調査を実施した。
調査票の作成にあたり,主題にかかわる内容について文献研究を行い,研究の方向を探った。その上に立って,基礎的・基本的な内容と個性についての調査票を作成するために,その構成要素を洗い出し,それを観点とした。
そこでとらえた構成要素が,学校においてどのように受け止められ,指導されているかなど,その実態を把握するため,調査領域及び調査項目を設定した。なお,その設定にあたっては,学校の現状に照らし無理なく対応できるように考慮した。したがって,調査項目は,必ずしも構成要素と対応はしていない。
その実施にあたっては,調査対象数及び調査範囲等に細心の注意をはらい,信頼性の高いものになるよう配慮した。(1)調査のまとめ
調査の結果については,調査領域ごとに分析と考察を加えてきたが,それらを要約し「基礎・基本の定着と個性の伸長」に対する取り組みの現状を整理する。
【学習指導の現状】
指導の形態の面から見ると,一斉指導が中心にすえられていることが多い。一方,基礎的・基本的な内容の定着を図るための方法として,個別指導を取り入れた実践がかなり行われている。このことは,個人差に対応する指導の形態として重要と思われるので,学習過程への計画的な個別指導の位置づけとその在り方を工夫する必要があろう。
基礎的・基本的な内容については,多くの教師が「知識・理解」,「技能」に加え「関心・態度」まで含めてとらえている。しかし,その指導はあまり行われているとはいえない。このことは,情意面の指導の困難さを示しているといえよう。一人一人の興味・関心に合った指導の重要さを考えるとき,認知面とともに情意面の指導を深めていく研究を推進していくことは意義あるものと思われる。
【個人差に応じた指導の現状】
個人差に応じた指導の必要性を強く感じているが,その対応については極めて困難であるとしている。この間の隔たりの大きさを考えるとき,具体的な対応の仕方を追究することが必要であろう。
個人差を感じている対象としては,「知識・理解」が多くあげられており,知識面に重きをおいている意識の表れであることがうかがわれる。
一方,「見方や考え方」については,全般的に意識が低い傾向にある。このことは,個人差に応じて一人一人を大切にしていくという視点から見たとき,極めて重要な要素に目が向けられていないことを物語るものといえよう。
【個別化・個性化を目指す学習形態】
進度の違いに応じて進める学習や,興味・関心に基づいて「学習コース」などを選択して進める学習の形態を取り入れることについては,その必要性がうかがわれるが,それらの導入については,条件整備が必要であるともしている。しかしながら,いろいろな条件はあるものの,それらの学習形態は,児童生徒の理解を深め,一人一人に応じた指導をするために,児童生徒の個性を生かし,伸ばすうえで欠かせないものであると思われる。そこで,それらの導入の在り方を探ることが大切になるものと考えられる。
一人一人の目標を設定して進める学習については,その導入が現段階では困難であることがうかがえる。
【児童生徒の実態把握】
指導する単元(題材)に入る前の児童生徒の実態調査の状況は,校種間に調べ方の違いが見られるものの全般的に行われている。調べている内容