研究紀要第76号 「情報活用能力の育成に関する研究 第1年次」 -091/137page

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I 研 究 の 趣  旨

 コンピュータの発達は、膨大な情報の収集,処理と新しい情報の創造を可能にし,人間の行動様式,思考形態に大きな質的転換をもたらしている。そして,今後これによる情報化は社会のあらゆる分野において一層広汎かつ深く浸透していき,21世紀においては「高度情報社会」が実現するであろうと考えられる。

 情報化社会では,社会全体の物的生産力の増大という面のみでなく,知的情報の生産・流通・蓄積の増大をもたらし,情報量の急激な増加と情報の陳腐化はともに進み,情報の価値の変動も激しくなる。

 こうした,社会の変化に対応するためには情報を主体的に活用する能力,すなわち,情報活用に関する基礎的能力(情報リテラシー)と情報手段としての情報メディアへの積極的理解と操作能力を身につけることがこれから生きていく人間にとって極めて重要な資質として要求されるものである。

 臨時教育審議会は三次にわたる答申を総括し,今日的教育に求められる時代の要請として,教育改革の必要性を3つの視点に集約し提言している。

 その1つは,「変化への対応」の中で,予想を上回り,かつ広範な情報化の進展に対して,情報モラルの確立,情報化社会型システムの構築,情報手段の活用,情報環境の整備が必要であると述べ,更に,情報価値の認識の向上,情報活用能力の育成に本格的に取り組むための具体的な学校教育での情報化対応教育が急務であるとしている。

 また,教育課程審議会での審議のとりまとめにおいても,これからの学校教育においては,生涯学習の基礎を培うという観点に立って,社会の情報化に主体的に対応できる基礎的な資質を養う必要があると述べ,情報の理解,選択,処理,創造などに必要な能力やコンピュータ等の情報手段を活用する能力と態度の育成が図られるよう配慮することとしている。

 このようなことから,21世紀を担う児童・生徒をすこやかでたくましい人間に育てるために,全教育活動実践の中で,創造的に情報を活用できる能力を育成し,来るべき情報化社会に埋没し,自己を見失うことのないようにしなければならない。

 また,将来に生きる者として,自己教育力はもちろんのこと,この源となる情報活用能力を十分に身につけることは,人間の本来の生き方の探求や,社会の発展のための原動力になるものとして,極めて重要であると考える。

 このために,学校をはじめさまざまな教育機関において,情報活用能力の育成に本格的にとりくむことが必要であり,この推進に当たっては,特に,情報化の光と影を明確に踏まえ,新しい情報手段がもつ人間の精神的,文化的発展の可能性を最大限に引き出しつつ,影の部分を補う配慮が必要である。

 ニューメディアと言う概念と同様にこの高度情報社会という概念が,普遍性のある解釈や定義づけがなされていないことから,学校現場で,何を使ってどのような場で,どのように取り組めばこれらの資質,能力が育成することができるのか総合的に検討し,科学的な裏付けがなされなければならないと考える。

 本研究は,2年計画の1年次の研究として,児童・生徒の情報に関する基礎調査を基に情報活用能力を育成するための基本的な考えと実践のプロセスを構想し,今後,研究協力校での具現化のため「具体的な手だて」を試行・検証した結果であり,情報化対応教育のありかたについて,各学校や研究機関の参考に供するものである。


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