研究紀要第76号 「情報活用能力の育成に関する研究 第1年次」 -092/137page

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II 研 究 の 構 想

1.情報活用能力とそのとらえ方

(1)情報活用能力の分析と育成要素の焦点化

 研究の趣旨でも述べたように,これまで,情報化社会と呼ばれる今日の社会はど情報量が多く,多様で,加速度的に高度化し,情報のもつ役割が重視される社会は無かった。そして今や,この情報化社会は高度情報化社会に向けて急速に進展している。このような進展の著しい社会の中で,主体的に社会的,職業的活動を行うためには,情報を活用するための基礎的能力,つまり情報活用能力の育成が必要である。

 文部省「情報化社会に対応する初等中等教育の 在り方に関する調査研究協力者会議」(以降協力 者会議という)の「素案」では,情報活用能力を 「情報及び情報手段を主体的に選択し活用してい くための個人の基礎的な資質」と定議した。この 定義のキーワードである「情報」,「情報手段」, 「基礎的な資質」をどのようにとらえていくかは, 今後の研究を進める上で極めて重要である。まず, 「情報」であるが,この定義については「人間の 持っている知識,感情,意思などの精神的な内容 を外部から認められる形で表現されるもの」,あ るいは「特定の問題,状況に関して評価されたデ ータ」等,いろいろな説があり,国語辞典にいう 「ことがらの知らせ」,「事情の知らせ」といっ た常識的な表現では解決できない様々な問題を含 んでいる。そこで本研究では,この「情報」を「情 報とは,可能性の選択指定作用をともなうことが らの知らせ(林 雄二郎)」ととらえ,ことがら を「情報手段にのって伝えられる学習内容」(つ まり学習情報)に限定した。さらに「情報手段」 としては,普段学校で使われているメディアを取 り上げ,特にエレクトロニクスを利用したメディ ア(パーソナルコンピュータ等)を重視すること にした。これに関連して学習情報を,「学習情報 に対する情報活用手段の関連碩域とその対象例」 としてまとめたのが,図−1である。また,「基 礎的な資質」としては,「協力者会議」の「素案」 に基づき,「情報の判断,選択,整理,処理能力」 「情報の創造.伝達能力」,「情報化社会の特質, 情報化の社会や人間に対する影響の理解」,「情 報の重要性の認識,情報に対する責任感」,「情 報科学の基礎及び情報手段の特徴の理解,基本的 な操作能力」を取り上げた。

 このことは,次のような理由による。

《1》 情報過多の状況において,情報に振り回され 自己を見失うことなく,主体的に多くの情報の 中から必要な情報を選び,内容を判断し,選ん だ情報を整理し,適切な情報を引き出す能力, 更に,得た情報から新たな情報を作りだし,そ れを他へ伝達する能力が必要である。

《2》 情報化社会の特質や情報化の進展がもたらす 社会や人間に対する影響について,プライバシ ーや情報犯罪,VDT環境と健康の問題なども 含め,その光と影の部分を総合的に理解させる ことが必要である。

《3》 個人の情報アクセス能力や情報発信能力が飛 躍的に拡大することに対応して,個人が情報の 被害者となるだけでなく加害者となるおそれも あることを十分に自覚した上で,自己の発信す る情報が他の人々や社会に及ぼす影響を十分認 識し,行動する態度や他人の創造した情報につ いての倫理感などを育成することが求められる。

《4》 情報化社会の科学的背景を理解するために必 要な情報量,ディジタル・アナログ,制御等の 基本的な概念やコンピュータをはじめとする多 様な情報手段のそれぞれの特徴,役割,利用で きる領域と限界などについて理解させるととも に情報手段を手軽に使いこなし,情報を自由に


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