研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -111/137page
事例を通した教育相談の進め方に関する研究
− 予防的な指導援助 −
(第1年次)
要 旨
この研究のねらいは,教育相談において,より的確で効果的な「予防的な指導援助のあり方」を確立することである。
そのために,予防的な指導援助のとらえ方を明確にし,教育現場に調査と事例の収集を行った。調査と収集した事例並びに当教育相談部での相談事例を基に,予防的な指導援助の要点と基本的な対応を帰納的に追求した。また,以上により集約した要点と基本的な対応が,予防的な指導援助に効果的であることを理論的に説明した。
一連の研究を通して,以下のことを明らかにした。(理論的な説明の内容は省略)
(1)予防的な指導援助とは,問題行動を起こすことが予測されると診断された児童生徒,または,現在の行為や行動が問題行動に向かって増幅されつつあると診断された児童生徒に対して,問題行動につながる素因や誘因を改善,解決または除去することである。
また,すべての児童生徒に対して問題行動を起こさないための意識づけを図り,問題行動の発生を予防する指導援助である。
(2)予防的な指導援助の主な要点の内容は,問題行動を未然に防ごうとする指導援助者の姿勢を基盤として,子供の理解を積極的に図り,問題行動の内容の理解を基に子供のさ細な問題点に気づくことである。その上で,資料収集,予測診断,予防仮説を段階的に踏まえ,子供や家庭との密接なラボール形成を図って予防援助することなどである。
1.解 題
問題行動の発生までには相当の潜在期間が存在する。そのため,顕在化した時点での問題行動は多くの要因が複雑に関係し合っており,指導援助に相当量の期間とエネルギーを必要とする。また,指導援助がなされても,問題の改善や解決が困難な場合もある。
そこで,児童生徒を問題行動にまで至らせないためには,問題行動につながる各要因の有機的な結合以前に,その要因の改善や解決を図っていく予防的な指導援助が必要となる。
本研究は,問題行動を未然に防ぐ予防的な指導 援助の確立を目指して行う,2か年にわたる継続 研究の第1年次である。
第1年次の研究のねらいは
予防的な指導援助の要点と基本的な対応について明らかにすることである。