研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -112/137page
このねらいを受けた研究の構想は次の通りであ る。
○ 予防的な指導援助についてのとらえ方を明らかにする。
○ 調査を実施する。調査の内容は,教師の実践した予防的な指導援助と,児童生徒の望む予防的な指導援助である。
○ 事例を収集する。事例の内容は,学校での予防的な指導援助の実践事例である。
○ 調査と収集した事例,並びに当教育相談部での相談事例を基に予防的な指導援助の要点と基本的な対応を帰納的に明らかにする。また,これらの要点と基本的な対応が予防的な指導援助に効果的であることを理論的に説明する。
総合的に研究の構想を図式化すると次のようになる。
第2年次は,予防的な指導援助の要点と基本的 な対応の有効性を演繹的に検証する。
そのために,予防的な指導援助の要点と基本的な対応を基に,具体的な対応のあり方を提示する。
また,具体均な対応を基に予防的な指導援助を学校において実践し,その実践事例を提示して教育現場における教育相談の実際に役立てる。
2.予防的な指導援助に関する基本的な考え方
「予防的な指導援助」とは
○ 問題行動を起こすことが予測されると診断された児童生徒,または,現在の行為や行動が問題行動に向かって増幅されつつあ ると診断された児童生徒に対して,問題行動につながる素因や誘因を改善,解決または除去することである。
「問題行動を起こすことが予測される児童生徒」とは,各種の資料から見て,現在,問題行動に密接に関連があると思われる素因を持ち誘因が身近に存在している児童生徒である。
また,「現在の行為や行動が問題行動に向かって増幅されつつある児童生徒」とは,現在の行為や行動自体は問題行動ではないが,その延長線上に問題行動が予測される。
すなわち,現在の行為や行動の程度が更にエスカレー卜した場合,問題行動に至ると予測される児童生徒を意味する。
以上の,内容を基にして,予防的な指導 援助の対象を図で示すと次のようになる。
*本研究は,より個別的な指導援助を中心とする教育相談の立場から,予防的な指導援助を以上のとらえ方で進める。
○ また,すべての児童生徒に対して問題行動を起こさないための意識づけを図り,問題行動の発生を予防する指導援助である。