研究紀要第82号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第1年次」 -001/123page

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個を生かす学年・学級経営に関する研究

1.研究の趣旨

 今,なぜ「個の重視」なのか。

 戦後の教育をみてみると,教育基本法の前文や第一条に示されている「個人の尊厳」・「個人の価値」にかかわる精神に則り,個を生かす教育が大事にされてきたと考えられる。

 また,臨教審第一次答申でも「教育の現状」の意義について次のように述べている。

 「我が国の教育は,教育の機会均等の理念の下に,教育を重視する国民性や国民の所得水準の向上などにより著しく普及し,我が国社会の発展の原動力となってきた。このような成果をもたらした我が国の教育は,諸外国と比較して,初等中等教育の水準が高く,その結果,全般的に知的水準の高い国民が育成され,また,高等教育においても著しく進学率が上昇し,国家・社会の発展と国民生活や文化の向上に寄与してきた。これらの諸点は国際的にも評価されている。」

 しかし,臨教審の審議過程で強く指摘されたのは学校教育の画一性による弊害である。

 今までの「学校教育」は,国民の知識水準,教育程度を等しく高めることに力を注いできた。

 このことは,教育基本法の精神等にある「個性」を軽視したわけではなく,それ以上に「均質化」「画一化」にそれなりの意義があったことと理解できよう。この意義を認めつつも,昭和53年の教課審答申では「個別化」,第13期中教審報告では「個性の伸長」,そして先の臨教審答申では「個性重視の原則」がそれぞれ打ち出されてきた。もともと,教育は「個に成立する」ことが前提とされているにもかかわらず,今,改めて個が重視される背景として,次のようなことがいわれている。

 第一には,次のような「今まで以上に個が重視される」条件が整ってきたということ。

 1 社会的風土,思想的風土,社会的要請の機が熟してきた。

 2 学級規模が少数化されてきた。

 3 施設,設備面等の整備がされてきた。

 第二には,批判の多い現在の学校の教育機能回復のために,「個を生かす」必要に迫られているということ。それは,

 1 一斉画一からの脱却であり,

 2 効率主義一辺倒からの脱却である。

 本県の現状はどうであろうか。当教育センター講座研修生の多くが,「個重視の理念はわかるが,学年・学級経営上の迷いがある」という。

 言うまでもなく,教育目標具現の場は学年・学級にある。学年・学級は児童生徒の学習や生活の基盤であり,主体性や社会性の育成の場であり,個の伸長を図る場でもある。

 また,学年・学級の中では一人一人が集団の一員として認められ,尊重される中で個が生きることが大事である。

 以上のような「個」重視の原則に立って,本研究を進める。即ち,本研究は,「均質化や画一化」の教育から「個の重視」の教育への流れを踏まえ,県下各校教師の「個の重視」についての意識等の現状把握に努め,児童生徒一人一人の個が生きる学年・学級経営の充実策を追究するものである。

 本年度はそのための理論研究と調査を行う。

2.研究の構想

1.学年・学級経営に関する問題点

 各学校においては,「個を認め,個に応じ個を生かし,個を伸ばす」ため,それぞれ,学年・学級経営の改善充実を目指して,鋭意努力し,実践がなされているところである。

 しかし,一方では,「集団の統一」や「学年・学級のまとまり」の名のもとに,個人の主体性や個性が発揮されず,「個」が集団の


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