研究紀要第85号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -093/123page

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1 研究の趣旨

 教育課程審議会の答申では「国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し,個性を生かす教育の充実を図る」ことが基本方針の1つとして示さている。それを受けて小・中・高等学校の新しい学習指導要領の総則で「学校の教育活動を進めるにあたっては,自ら学ぶ意欲と社会の変化に主休的に対応できる能力の育成を図るとともに,基礎的・基本的な内容の指導を徹底し,個性を生かす教育の充実に努めなければならない」と述べていることから,個性を生かす教育が人格形成の基礎としてとらえることができるといえよう。

 そして,学校における教育相談のあり方を考えると,すべての教師による,すべての児童生徒を対象にした個性を生かした望ましい人格形成のための援助活動を,全教育課程の中で計画的に進めることが必要になってくる。

 これまでに当教育相談部では治療的な教育相談の進め方を研究し,治療的な指導援助の手引きを作成した。また,予防的な教育相談の進め方の研究では,その要点と具体的な対応のあり方も明らかにした。ここで,学校での指導援助の実際を見ると,どうしても一部の問題行動を持つ児童生徒の治療的なかかわりで終わってしまっているのが現状で,全児童生徒一人ひとりの個性を生かし,全人格的な発達(自己実現)をめざす開発的な指導援助が,あまり活発に進められていなかったと思われる。

 いま,個性を生かす教育が重要視されている折,児童生徒の発達過程をふまえ,児童生徒の持っている潜在能力を認識させ,その能力を発拝できるように,指導援助することが強く望まれるようになってきている。

 本研究は,これらの現状をふまえ,児童生徒の将来の向上のために自己理解を援助しながら,一人ひとりの個性を生かし,そして伸ばす,開発的な指導援助のあり方を以下に示すような3か年計画で追究してみることにした。

研究計画

 第1年次(平成2年度 本年度)

(1) 開発的な指導援助の基本的なとらえ方を明らかにする。

(2) 開発的な指導援助の実態と意識の調査を児童生徒・保護者・教師を対象に実施し,児童生徒の現在の姿と今後のありたい姿,保護者からみた子供理解の現状,教師の開発的なかかわり等について,日ごろの教育活動のなかでどのように実践され効果をあげているのかを把握する。

(3) 調査の結果から,保護者や教師が児童生徒の開発的な指導援助における今後の課題を集約し,今後の指導援助の方向についてまとめる。

(4) 研究協力校を設け,学級集団の実態を把握することと,学級の実態分析から開発的な指導援助のあり方を追究する。

(5) 調査を中心に,開発的な指導援助の基本的対応と,学校での各指導場面における開発的な指導援助の内容をまとめる。

 第2年次(平成3年度)

 第1年次に明らかにした基本的対応に基づいた具体的な対応のあり方をまとめ,それに基づいて研究協力校において開発的な指導援助を実践し,より効果的な具体的対応を明確にする。

 第3年次(平成4年度)

 第2年次に明らかにした具体的な対応に基づいて,研究協力校における実践例を提示する。


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