研究紀要第85号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -095/123page

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3 意識調査の研究

1 調査のねらいと概要

(1)調査の目的

 理論では,開発的な指導援助に必要な要点を「健康」「安全」「所属と愛情」「自己理解」「自尊」「将来への向上」の6つにおさえた。意識調査では,今後の研究において,それぞれの要点ごとに具体的な指導援助を明らかにしていくための基礎資料を得ることを目的とした。

 各要点ごとに,指導援助の方向性を考察するためのねらいを以下のように設定し,意識調査の内容と結果の考察に関連を持たせた。

《健康》

 自己実現のもっとも基礎的なものとしてとらえる。意識調査から,児童生徒が自ら健康に留意している現状とその関心の実態を明らかにする。

《安全》

 生活全般において安全が保障されていることが自己をみつめる前提になることから,児童生徒の「不安」の実態を「いじめ」を中心に明らかにする。

《所属と愛情》

 集団からの受容,認めなどから自己存在感を持っことになる。意識調査から,「集団からの認め」と「自己から他者への働きかけ」の実態を明らかにする。

《自己理解》

 上記の三つの要件が満たされ,「他者からの認め」が十分になされたときに「自己を見つめること」が深まる。

 児童生徒の自己理解の現状を「長所の理解」「学習方法の理解への意欲」という面から実態を明らかにする。

《自尊》

 教師からの認めや賞賛が根底となり,「自分への自信と誇り」を持つようになる。「教師からの認め・賞賛」と「他者への働き掛け」等の実態を明らかにする。

《将来への向上》

 児童生徒が,以上の要件を根底に,将来への見通しを持ったとき,自己実現への意欲になる。児童生徒の「将来への見通しと努力」の実態を明らかにする。

(2)調査の対象

 ねらいに基づき,「児童生徒」とその「保護者」および「学級担任経験教師」に意識調査を実施した。学校規模,地域等に偏りがないように調査協力校を選定し,図1の有効データ数を得た。

 なお,教師については,必要データ数を確保するため,県教育センターの各種講座研修者の協力も得た。

図1 調査対象別有効データ数一覧(人)
  児童生徒 保護者 教師

小学校5年
6年
小計  

458
605
1063

511
499
1010

256

中学校1年
2年
3年
小計  

356
380
343
1079

339
374
324
1037

335

高校 1年
2年
3年
小計  

538
220
171
929

253
256
210
719

210

合計  

3071

2766

801


教師年齢別人数割合(%)

 

 

20代

25

51

35

30代

46

34

41

40代

18

6

12

50代

11

9

11

(3)調査の形態

○ 各対象ごとにねらいに即した内容を検討し,児童生徒用48問,教師用46問,保護者用26問に精選した。

○ 各対象とも,一部記入内容を除いて,3〜5つの選択肢方式とした。児童生徒用の48問のうち28問は,「現在の自分の姿」と「今後めざしたい自分の姿」の二つの選択肢群を設定した。

 図2は児童用意識調査「自分を見つめて」の抜粋である。

図2 自分を見つめて(抜粋)

 9 いたずらやいじめられるなどなく,安心して学校生活を送っていますか。

  現在  大変安心している=安心している  =ときどき不安になる=毎日不安である

  今後  いつも安心していたい =なるべく安心していたい=あまり気にしない =関心がない

 19 友人から悪いことに誘われても,きちんと断わることができますか。

  現在  できる  =場合によってできる= あまりできない =できない

  今後  ぜひそうしたい = そうしたい =あまりそうしたいと思わない=関心がない

 28 目標とする人,または尊敬する人を決めて,その人のようになろうと努力していますか。

  現在  努力している =場合によってしてる= あまりしてない =目標の人はない

  今後  ぜひそうしたい = そうしたい =あまりそうしたいと思わない=関心がない


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