研究紀要第86号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第2年次」 -001/109page

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I 第1年次研究の概要

1 主題設定の理由

 個性にかかわる内容については,ここ10年余 の間に,社会の変化に伴ってその時々に託したお もいを読み取ることができる。すなわち,昭和53 年教育課程審議会答申の中に「個別化」,昭和58 年中央教育審議会報告の中に「個性の伸長」,昭 和60年臨時教育審議会答申の中に「個性重視の原 則」,そして,平成元年学習指導要領の改訂では 「個性を生かす教育」としてそれぞれの答申,報 告の中に見ることができる。

 「個性を生かす」ことが重視される背景として 「学習は個において成立する」との教育の原則, 「多様な価値観への対応」を求める社会的要請, 「新しい学力観」に立った学力の向上,「40人学 級編制」に伴う条件の整備等があげられる。

 本県における実態調査*では,小・中・高校の 68.7%の教師は,「個性重視の理念は分かるが学 年・学級経営上の迷いがある」としている。

 学年・学級は,児童生徒の学習や生活のすべての基盤であり,主体性や社会性の育成の場,個性伸長の場でもある。

 これらのことをふまえ,児童生徒一人一人の個性が生きる学年・学級経営の充実策を追究するため,本主題を設定した。

2 研究計画

○ 第1年次  

○ 第2年次 (本年度)  

○ 第3年次  

3 研究を支える基本的な考え方

* 平成2年8月 本教育センターによるアンケート調査

(1)個を生かす学年・学級経営

  「個性を生かす」ことは,教育の理念,目的で ある。すなわち,一人一人の児童生徒をかけがえ のない存在として認め,プラスの特性であるよさ を見いだしそれに応じた最適な手だてを工夫して 育て伸ばす。そして,他人の個性を認め,自己の よさを生涯をとおして自覚し十分に発揮しながら 生活・活動できるようにすることである。

 「個を生かす」ことは,個性を生かす教育の方法としてとらえている。すなわち,「ある特定の児童生徒を生かす」ことではなく,集団の中で存在を確認して「それぞれの児童生徒をそれぞれに生かす」ことである。

 したがって,学年・学級経営にあたっては,教師が児童生徒のあるがままを認め,それぞれをよりよい存在として学年・学級の中に位置づけ育て伸ばしていく。そして,級友のよさを認め,自己のよさを自覚して十分に発揮しながら生活・活動できるように学年・学級経営をすることが「個を生かす学年・学級経営」である。

(2)個を生かす視点

 個を生かす学年・学級経営を進めるための視点 として,「個を生かす4つの視点」を設定した。

研究の視点

 学年・学級経営を進める上で,認知的側面 と情意的側面の調和を保ち,他者受容,自己 表出を基盤にした社会性を保ち,主体的・自 立的に活動できる実践力を備えた「個性豊か な児童生徒を育成」するには,次の4点に着 目して指導していく必要がある。

  • 視点1 個の存在を認め,個の存在を大切に する内容・方法を明確にすること。 
  • 視点2 個の特性をとらえ,生かす内容・方 法を明確にすること。 
  • 視点3 認知面に偏ることなく,情意的側面 との調和を考えた実践活動の在り方を探ること。 
  • 視点4 個性豊かな生き方のための基礎・基 本の習得を図る内容・方法を探ること。

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