研究紀要第86号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第2年次」 -002/109page
4 成果と改善の方向
「個を生かす学年・学級経営」に関する理論研 究と県下小・中・高校教師の「個の重視」にかか わる意識等の実態調査を実施した。その結果, 「個を生かす必要性」をほとんどの教師は認めて はいるが「時間的余裕がない」,「何をどのよう にすればよいか」の具体的方法がはっきりとつか めていないなどが分かった。すなわち,「一人一 人を大切にしていかなければならない」を基底に, 今後「個を生かす学年・学級経営」を追究してい くにあたって,4つの視点のそれぞれに対する研 究・実践の必要性,方向性が明らかになった。
視点1にかかわる改善の方向
- 1 教育課程一般編等を,学年・学級経営の 立場から吟味し,個の願いや目標を学年・ 学級の目標設定に反映させる。
- 2 発達段階,学校規模等を考慮して,個の 存在を大切にしようとする意識を高める。
視点2にかかわる改善尾方向
- 1 教職員間の共通理解を図った上で「個を 生かす」ための内容・方法を学年・学級経 営等に位置づける。
- 2 教師一人で「個を生かす」ことは困難な ことから互いに補い合う学年・学級経営を 心がける。
- 3 個の発達段階,学力等の違いをふまえ, 小学校,中学校,高校の一貫性を見とおし て柔軟な指導および学習が可能となるよう な,学年・学級経営を進める。
視点3にかかわる改善の方向
- 1 情意的側面の評価の在り方について,全 教職員の共通理解を図る。
- 2 児童生徒自身が自己理解を深め,自己の 課題を明確にし意欲的に自力解決を図る態 度を育てる。
視点4にかかわる改善の方向
- 1 発達段階や個々の実態に応じて,個性豊 かに生きるための基礎・基本を明らかにし, その習得・定着をめざす学年・学級経営を 推進する。
- 2 「個が生かされる」学習環境としての物 的環境,人的環境を整備・活用する。
II 本年度研究の構想
1 研 究 内 容
本年度は,前年度の「成果と改善の方向」を受 けて,次の各項について研究を進める。
- (1)4つの視点についてそれぞれの改善の方向 を充たす指導・援助の在り方,活動の在り方を明 らかにするとともに,指導事例や活動事例を収集 ・開発する。
- (2)収集・開発した事例を「個を生かす学年・ 学級経営アイディア集」としてまとめる。
- (3)協力校において「個を生かす学年・学級経 営アイディア集」のいくつかの項目について実践 し他の視点との関連,有効性・効果,指導上の配 慮事項等を明らかにする。
- (4)協力校での実践及びアイディアなどをもと に,「個を生かす学年・学級経営アイディア集」 を修正・再編集する。
2 研究の見とおし
「個を生かす学年・学級経営」を行うには,これまでとは違った新しい内容・方法のもとに経営を展開していくとの意図をもつものではない。
各教師がこれまでに指導・実践してきた内容を 4つの視点から見直し,意識して指導していくこ とが「個を生かす」につながっていくと考える。
本研究では,個を生かす4つの視点からこれま での教育活動を見直していく過程において,新た な事例を開発したいとの基本的な願いをももって いる。
このような考えのもとに,本研究を進めるにあたって,次のような見とおしを立てた。