研究紀要第90号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第3年次」 -027/117page
3・4であり,個を生かす学年・学級経営を実現するためには,視点3・4の精神を忘れてはいけない。
また,特に視点4は,他の視点とは異なり人間形成全体にかかわる内容であり,3つの視点を包括する位置にある。○ 「個を生かす学年・学級経営」を実現するためには,まず児童生徒一人一人をかけがえのない存在として認めなければならない。そして,認知面に偏ることなく情意面も大切にしながら,一人一人のよさを見いだし,生かし,伸長することが重要になる。このことは,将来における個性豊かな生き方につながるものである。
このことから,4つの視点を手がかりにすることが「個を生かす学年・学級経営」への展望を開くことになると同時に,その実現に当たっては,4つの視点は不可欠のものである。3 よさを見いだす手だての工夫について
よさを見いだす手だては,これまで主として観察によることが多かった。これらの手法で多くのよさがとらえられてはきたが,人間の内面にも目を向けて意図的・積極的によさを見いだすことが必要になってきた。
しかし,よさを見いだす手だてに定式はなく,私たちが実態に応じて使いやすい形にし,児童生徒の内面のよさまでも見いだす方法の工夫が要請されてきている。そこで,調査・検査や各種のカードを使って児童生徒のよさをとらえ直してみると,教師の児童生徒をみる視野の狭さや偏りに気付き,先入観にとらわれることなく視野を広げる必要性を痛感した。4 よさを生かし,伸長する支援の在り方の究 明について
見いだしたよさを生かし,伸長させるには,まず児童生徒のよさを認めることから始まる。児童生徒が自分のよさを知り,そのよさに自信を持ち,自分自身が自分のよさを伸長するよう支援していく必要がある。
このような一連の支援活動を適して,「よさを生かし,伸長する」ことは,かけがえのない一人の人間としての尊厳を認めることにつながり,人間生活の望ましい在り方を共有することにもなる。5 「個を生かす学年・学級経営アイディア集」について
「個を生かす」4つの視点から日常の指導事例や活動事例を検討しまとめたものが「アイディア集」である。
「いつ」「どこで」「何を」「どのようにすればよいか」が明らかにされており,個を生かす学年・学級経営の進め方が分かるようになっている。
また,このアイディア集を利用・活用しやすいようにコンパクトにまとめたものが「個を生かす学年・学級アイディア集1日編」である。(4) 個を生かす学年・学級経営
「個を生かす学年・学級経営」を行うには,これまでとは違った新しい内容・方法のもとに経営を進めていくことではない。
各教師が,これまでの支援・実践してきた内容を4つの視点から見直し,意識的に指導していくことが「個を生かす」ことにつながっていくと考える。特に,
・一人一人の児童生徒をかけがえのない存在として認め,個の存在を大切にすること。
・個のプラスの特性であるよさを見いだし,それに応じた最適な手だてを工夫して伸ばしていくこと。
これらのことについて,意図的・計画的に支援していくことが,個性豊かな児童生徒育成への道であると言える。(5) 今後の課題
本研究で残された課題は,特に個を生かすための指導事例や活動事例の収集・開発に継続して当たることである。本研究は,本年度でまとめとするが,さらに,児童生徒自身が相互に支援し合える学年・学級にまで高まることを願っている。