研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -063/162page

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I 研究の趣旨

 今日、児童生徒の不登校をはじめとする「学校不適応」の問題は、大きな社会問題となっており、その問題の解決が緊急の課題となっている。

 これらの問題の背景には、学歴社会や受験競争を煽る社会風潮といった従来から指摘されてきた問題が影を落としており、それは否定できない事実である。それらが教師や保護者に不安感を与え、また、児童生徒にとってはプレッシャーとなり将来の不安感をつのらせ、学習への意欲や将来への希望を失わせているものと考えられる。

 さらに、「学校不適応」の大きな背景としては、児童生徒をとりまく環境である学校や家庭を見逃すことはできない。例えぱ、要因の多くが学校にあるとも指摘されているとおり、学校生活では児童生徒がいじめに苦しんだり、教師との人間関係に悩んだり、学業不振などから学習への興味や関心を失ったり、学校の指導方針や校則になじめなかったりする場合がある。また、家庭にあっては学校への依存度が強くなる傾向がみられ、児童生徒のしつけや管理など、家庭ですぺきことが行われず「心の居場所」になり得ない状況にもある。その上、児童生徒をとりまく家庭や地域社会の教育力は弱まり、幼少期からたくましく健やかに成長するための基"が弱くなっている。

 このように、「学校不適応」の問題は、さまざまな要因が複雑に絡み合っていると言える。現に、児童生徒の人間関係のつながりや集団へのかかわり方には大きな変化が現れている。こうしたことは、児童生徒自身のものの考え方や意識の変化と無縁なものではなく、これもまた、一つの要因となっていることを示すものと考えられる。

 以上のような、考えられるさまざまな要因があって現象化した問題とはいえ、現在「学校不適応」の問題は多くの児童生徒を巻き込み、一股化し、だれもが不適応状態に陥っても不思議ではない状況にある。したがって、本研究では、問題を抱えた一部の限られた児童生徒も、また、そうでない児童生徒年も共通して起こりうる「学校不適応」の背景にあるさまざまな要因の本質を調査・によってとらえ、適切な援助の在り方について実証的に研究するものである。

II 主題についての考え方
1 学校不適応とは

 児童生徒は、自己の望ましい姿をめざして成長しようとする存在である。その児童生徒が集団生活の中で自らを発見し、高めていくためには、学校環境と調和融合し、個性や能カを生き生きと発揮できる状態にあることが必要と思われる。

 児童生徒はそうした状態を求め、自分を学校環境に合わせようとしたり、自分に合うように学校環境そのものに働きかけようとする。しかし、これらがうまくいかずに児童生徒と学校環境との間に不調和が生じ、なんらかの緊張や葛藤が生まれたとき、不登校に代表されるようなさまざまな問題行動が発生しやすい状態になる。本研究ではこのような状態にあることを「学校不適応」ととらえる。

 次に、「学校適応」と「学校不適応」を対比させながら、上記の内容についてさらに説明を加える。

学校適応とは

学校環境と調和融合し、集団の中で自らを発見し高めている状態であると述べたように、「集団の中で自分の存在を感得し、集団の中に予測する(このようにありたい、このようにできるだろう)自分の役割行動が実現でき、集団の中で自分のよさが十分に発揮できていると感じていることであり、自己実現に向かう姿」と押さえる。

 これに対し

学校不適応とは

学校環境との間に不調和が生じ、緊張や葛藤が生まれ、問題が発生しやすい状態であると述べたように、
「集団の中に自分の存在を感得できなかったり、集団の中に予測する自分の役割行動が実現できず、


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