研究紀要第96号 「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」 -064/162page
または、集団の中で役割行動が発揮できないと感じ、本来の自分の個性を引き出せないでいることで、自己実現に向かう働きが停滞した状態である」と押さえる。
2 援助の在り方について
人間はたえず環境の困難に直面する。そして、この環境の課題を解決し、困難な障壁を乗り越えていく。しかし、学校不適応は、その環境と不調和なまま調整できず、不適応を引き起こしている状態である。
学校になじめず、ひきこもり、無気力といったものを含め、種々の問題行動を生んでいるのであるが、問題行動を示す児童生徒に共通してあるものは、学校不適応意識の存在である。現実に問題を起こしているのは、不適応意識があるからだといえよう。身体化し、行動化する現象の面に目を向けるよりは、現象の裏に隠れている学校不適応意識を取り上げることが重要であると考える。
したがって、環境との間に生じた児童生徒の不適応意識は、環境と個の調整によって解決されるべきである。また、不適応意識を抱いた児童生徒には、例えば、学校不適応の主要な一つとして不登校があげられるが、こうした状態にある児童生徒達にとって重要なことは、単に再び学校に通えるようになれぱよいというわけではなく、不適応という状況を自らの努力で克服していく過程で、どのような能力を身につけ、いかに成長し自立していくかということにある。つまり、適応を図るために個人の成長をいかに促すかという視点に立った援助であると考える。
<求めようとする援助の視点>
上の図の援助の視点は、集団での望ましい関係をつくるための「調整」だけでなく、個に対する 直接的な教師の手立てによって適応する力を育て、環境と個の関係を前向きによりよく「構成」していくという意味合いを持つ。
適応が単に周囲の者たちの考えを無批判に受け入れたり、それに従ったりすることであれぱ、適応していても、その適応は望ましいものとは言えない。したがって、自分に合うように学校環境そのものに働きかける能動的な力を育てることが必要である。本人が環境に働きかける中で環境が変わり個も変わるといった援助が求められる。
3 研究仮説
「学校不適応」の背景にある要因を明らかにし、環境と個の調整及び構成に向かって個性や能力が発揮できるよう援助していけぱ、学校不適応状態にある児童生徒の適応意識は高まり、自立的な行動がとれるようになるであろう。
4 研究計画
第1年次
(1)学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究の構想を立て方向性を探る。
(2)学校不適応生徒への援助の在り方を探るためのアンケート調査を実施する。
(3)アンケートの調査結果を分析し、学校不適応の要因を明らかにする。
(4)援助の試案作成を試みる。
(5)調査研究のまとめを行い、次年度の研究課題を設定する。
第2年次
(1)援助の試案を模索する。(研究協力校に援助の試案を打ち出す準備段階)
(2)学校不適応に関するアンケート調査を研究協力校において実施する。
(3)援助の試案を研究協力校で実践し、その効果を調査する。
(4)実践の反省に基づいて試案を修正する。
(5)研究のまとめを行い、次年度の研究の課題を設定する。