研究紀要第100号 「国際理解教育におけるソシオドラマの活用」 -093/156page
・ 演ずることで自分を他の立場におき,自分や他人の心を理解できた。(4名)
・ 国際理解教育の手法としてのソシオドラマを体験できたことが有意義。(3名)
・ 構えずに,日常生活の中でできる国際化について理解できた。(2名)
この他に,31種類の意見や感想が寄せられた。その中で共通していることは,やはり人間を理解する洞察力の重要性や感受性を高めることが,国際理解の基本であるという認識である。
また,ソシオドラマの有効性についても肯定的な意見が多かったが,先の質問に対する回答からも明らかなことである。
「2 特に,良かった点はありますか」
・ 演習形式で自ら表現し,実際に体験する点。(10名)
・ 指導者の雰囲気づくり,声。話の間のとり方。(5名)
・ 現実に起こりえる設定であったこと。(2名)
・ ドラマを途中で適当に止め,心理を聞き,それに対してよく納得し,受容されることが快く,雰囲気を前向きにする。(2名)
この他,22の肯定的な意見があった。(良かった点,ということで肯定的な意見しかない。)その内容は,多くの点で1の問いと重複していた。
「3 改善点を教えてください」
・ 演習の内容と国際理解教育とのつながりについて,もっと詳しく説明がほしかった。(4名)
・ 限られた時間の中に盛り沢山だったので混乱した。(2名)
説明については,確かにもう少し丁寧に説明した方が良いかと感じるときもあり,指摘はもっともな意見である。この他,27の意見が寄せられたが,時間や人数,休憩のとり方,授業での実践方法の提示の必要など,前向きで建設的な意見が数多く見られた。
テーマについても,在日韓国人・朝鮮人の問題を取り上げることや,環境問題,人口問題,南北問題などの扱いについて提案があり,方法的にはディベートの活用などの意見もあった。
全体として,受講生の反応は肯定的であり,充実した研修になったものと考えられる。
(2) 指導しての反省
私自身の反省・評価としては,2点ほどあげたい。
・ 演習とテーマとの関わりについては,くどいと思うほど確認して進めた方が,受講生は安心すること。
これは,受講生の改善意見と関連することであるが,再確認させられたことである。
・ 技術的に,深みの出るようなくふうをすること。
たとえば,「今日から日本の学校で」の場面で,マリコのブラジルにいる祖父母や友達を設定すると,もっとソシオドラマとしての深みが出たのではないかと思う。
前日の夜の,マリコと両親の会話の場面でも良かったかもしれない。
しかし全体としては,ソシオドラマを国際理解教育で活用することに自信と確信を持っことができたように考える。私自身の技量の未熟さはさておき,手法としての有効性は疑うべくもないと思うのである。